成功者には大器晩成と言われる人々がいます。
若い頃はさほど芽が出ず、中年以降で大きく羽ばたくといった印象です。
そういった人々についてその成功の秘訣を見ていこうという本です。
ただし、それにもいろいろな場合があるようで、本書も「50代以降に花開いた」と「50代以降から新たな挑戦を始めた」「50代以降に新ジャンルに挑んだ」と分けてまとめられています。
アインシュタインなどはノーベル物理学賞を受賞したあと50代になって新たな挑戦を始めた、とされていますが、これはちょっと「大器晩成」とは言えないように思います。
天才はいくつになっても天才だったというだけのことでは。
同様に、伊能忠敬、ハインリヒ・シュリーマンも並べてありますが、いずれも若い頃から商売などの事業に成功し、40代、50代になってそれらの事業から引退して新たな道(測量術・考古学)を学びなおして大きな成果を挙げたというものですが、これも「大器晩成」というには少し違和感があります。
これも「何をやってもすごい人はすごい」といった方が良いのでは。
その点、カール・マルクスなどは若いうちは着想や思考には優れたものがあるものの、世渡りのまずさ、責任感の欠如などでさっぱり芽が出ず、その才能に惚れ込んでいたエンゲルスの援助でようやく大著資本論を完成させるという、これなら大器晩成という名にふさわしいと言えるものでしょう。
またモールス信号で有名なサミュエル・モールスは40代まで画家として活動し、大学の美術教授にもなったものの、結局は才能の限界を感じて画家をやめてしまい、その後電信装置の開発に邁進、さらにモールス信号まで作ってしまうという、まあこれも大器晩成というには少し違うのではとも思いますが、新たな道を進んでいくという努力は大変なものだったのでしょう。
著者からは40代50代の中年読者に対しての激励の思いが感じられます。
さすがに70になった私にはもう無理かもしれませんが。
