画家で絵本や本の装丁も数多く作成していた安野光雅さんが、親交のあった人々についてのエッセーを週刊朝日で2012年に1年間連載していたそうです。
その文章をまとめて本にしたもので、交際範囲の広いことに驚きます。
どのように知り合ったかということも文章内に書かれていることが多く、若い頃からの親友という人もあり、また本の装丁を頼まれて以来の付き合いという方も多いようです。
全ての方の名前を記すわけにもいきませんので、知っている人の中から挙げておきます。
高峰秀子、井上ひさし、半藤一利、黒柳徹子、平野レミ、千住真理子、藤原正彦、檀ふみ、阿川佐和子、櫛田孫一、等々というところです。
2012年、安野さんが80代半ばといったところですので、若い頃からの知り合いの方の多くは故人となっています。
高名な方々の意外な一面ということもかなり出てきました。
井上ひさしさんは多くの作品を残していますが、出来上がりの遅いのでは有名だったそうで、特に舞台での戯曲などの場合は公演の都合もあり周りの人々はかなりひやひやしていたそうです。
劇場の関係者から安野さんに「井上さんに早く書くように口添えしてもらえないか」と依頼されたこともあったとか。
司馬遼太郎さんに井上さんの原稿が遅いことを愚痴ると、「彼は日本で一番良いひとだから遅れてもいいんだよ」と言われたそうです。
バイオリニストの千住真理子さんとNHKのテレビ番組でエルベ川紀行に行ったそうです。
ハンブルクの運河沿いの古い倉庫の5階でバイオリンを弾いて貰う設定だったのですが、手すりも無い窓辺で身を乗り出して弾きました。
すると倉庫のオーナーが家族を連れてきて聞かせて良いかといってすぐに呼びにゆき、千住さんの演奏を7名ほどで聴くという、非常にぜいたくなコンサートになったそうです。
安野さんは絵も味のあるものでしたが、文章もなかなかのものでした。