誰もが自分で食べたことがあるのでしょうが、それについてほとんど何も知らないというのが学校給食でしょう。
また自分の子どもが実際に食べているが、それでも「給食のお知らせ」などと言う通知が来たとしても何かよく分からないというものかもしれません。
そういった学校給食について、東京都武蔵野市の給食・食育振興財団の理事長という佐々木さんが詳しい解説をしています。
現在、日本の小中学校のほとんどでは学校給食が実施されています。
ただし非常に厳しい状況であることは時々報道されることはあっても、その内実についてはあまり分かりません。
給食費も無料化しようなどという動きもありますが、たいていのところでは月々決まった給食費を納入していますが、それが高いのか安いのかということもあまり意識できません。
しかしこの本で説明されていることを見ていくと大変な業務をこなしているのだということが分かります。
とにかく、対象となる児童生徒の数が非常に多い。
街の食堂で客の数が百人などというとすごいと思いますが、小さな小学校でも児童数が100人なんて軽く超えます。
それだけの数の食事を昼前までに全数そろえなければならない。
しかも安全であることが絶対条件となっており、ミスは許されません。
食育ということが言われ、それを担当するのも給食担当者ということになります。
食事の意味、食材のあれこれなど、子どもたちに教えなければならないとは言っても誰がどのような機会にやるのか、その余地があるのか、等々難しいことが山積みです。
学校給食の調理もかつては学校それぞれに調理場があり、そこで調理するという単独方式というのが普通だったのでしょうが、合理化の必要性から周辺の学校すべてを一か所で賄う大規模調理場というものが増えてきました。
そこでは数千食を製造するということも普通です。
集中調理の場合はそこから各学校まで運搬するという手間と時間も必要となってきます。
さらに現在では民間委託ということも増えてきました。
こういった動きは実は政府文科省の目指すところです。
予算の限られた中でできるだけ経費削減をしようとする目的があります。
しかしそれは給食を食育と結び付けようということとは全く逆方向です。
もっとも小規模な各佼の単独調理方式ならば担当の栄養士や調理員が時間を見つけて児童生徒に説明するということも可能ですが、大規模化、民営化が進めばそういったことはほぼ不可能になります。
民間委託ではない第三の道というのが、武蔵野市で実施例のある給食・食育振興財団の設立でした。
著者がその理事長を務めるということで、その説明にも一章を費やしています。
このような方策を取るというのは自治体にとっても負担が大きいことですが、たまたま当時の市長や教育長など行政側がその意識の高い人たちだったので実現しました。
私にとってはもう60年も前の思い出となってしまった学校給食ですが、今でも奮闘している人々がいるということです。
