戦争をするためには多額の費用がかかります。
特に現代の戦争は国と国との総力戦となり、国全体の経済を費やして行うものとなっています。
したがって、戦争とは経済というものと密接な関りがあるのは当然なのですが、これまではあまりそれをまとめて論じたものが無かったようです。
そこで防衛省防衛研究所で戦争や軍事の経済学というものを研究している著者が広く戦争と経済というものについて論じています。
各章ごとにテーマを掲げていますが、それを見るとその対象が広域であることが分かります。
第1章 戦争のミクロ経済学
第2章 戦争のマクロ経済学
第3章 戦争の財政学
第4章 戦争の金融論
第5章 戦争の銀行論
第6章 戦争の産業論
第7章 戦争の通商・貿易論
第8章 戦争の公共経済学
第9章 戦争の経済思想
とはいっても、それほど堅い学術論というわけではなく、素人にも分かりやすく実例を多数あげたもので、読むだけで何となくわかった気にさせてくれるようなものとなっています。
かつての軍事費の中でも大きな部分を占めたのが軍艦でした。
多くの資金と資源を費やすものでした。
その建造費が16世紀のメアリー・ローズから2017年の空母クインエリザベスまで掲げてあります。
明治維新後、日本があわてて整備した軍艦の費用が高いのには驚きます。
1866年のフリゲート艦開陽丸が36万両で政府支出に対し3.0%、1902年の戦艦三笠は1176万円でなんと政府支出の4.4%を占めていたそうです。
そんな貴重な戦艦が日露戦争初頭の旅順港閉塞作戦で2隻相次いで機雷に接触して沈没しました。日本の衝撃は大変なものだったようです。
19世紀から戦争が国家の総力戦になるに従い、戦費も上がり続けました。
19世紀半ばのクリミア戦争ではイギリス・フランスともに戦費のGDP比率は3%だったのですが、その後どんどんと上がり続けて第一次世界大戦ではイギリスでGDPの40%、フランスで45%に相当したそうです。
なお、日露戦争では日本の戦費がGDP比22%に達し、ロシアの7%に比べてもはるかに高いもので、とても勝利したなどと言えるものではなかったことがこれからも分かります。
傭兵というと何か悪いイメージがありますが、国民皆兵とも言えたギリシア・ローマ時代から移り変わり古代ローマも後半になると傭兵と言える存在となっていきます。
傭兵というのは実は非常に古くからある存在であり、人類の歴史と共にあるとも言えます。
ヨーロッパの封建時代には封建領主とそれに仕える騎士が戦争を行いましたが、徐々に鉄砲の発達ともなると傭兵の放つ銃弾で貴族の騎士もあっさりとやられてしまうこととなります。
その後フランスから国民国家となり国民兵が主流となりますが、傭兵は無くなることなく続いています。
さらに最近は民間軍事警備会社(PMSC)と呼ばれる傭兵会社が隆盛を極め、各地の戦闘に直接参加しなくとも大きな存在となっています。
なかなか興味深い内容でした。
とにかく「金が無ければ戦争もできない」というのは間違いないようです。
