爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ダルタニャン物語7 ノートル・ダムの居酒屋」アレクサンドル・デュマ著

この巻より、第三部「ブラジュロンヌ子爵」の大きなテーマである、フーケ財務卿との闘いに入ります。

 

フーケは長く財務卿を勤め、巨万の富を築いています。

それを問題視した国王ルイ14世とコルベールは対決することを目指します。

 

マザラン死去後、ルイ14世は直接国政を見ることを発表します。

その手始めとしてコルベールを財務監督官に任命し、フーケ財務卿に対することになります。

さらに軍事の大きな力としてダルタニャンを呼び戻すこととし、銃士隊長に迎えます。

コルベールはフーケの配下で国税を懐に入れていたデムリとリョードの二人を逮捕、即決の裁判で絞首刑とすることを決定します。

あまりにも速い展開で出遅れたフーケ側は、財務卿の弟フーケ司祭(とはいえ裏の世界とも通じる)に命じ、二人を処刑場から奪い返すこととします。

 

処刑が行われるのはグレーヴ広場、そしてその広場に面した居酒屋「金の聖母像」に配下を集め、居酒屋に放火して混乱したすきに処刑される二人を暴動に見せかけて奪い返すという計画でした。

しかし、その居酒屋は1週間前にダルタニャンがイギリス王から貰った金で買ったばかり、その家賃の回収に本人自ら出かけてきたところでした。

放火しようとしたフーケの配下を叩きのめし、ちょうど居合わせたラウルと共に一味を叩き伏せ、さらに警備の銃士隊を号令と共に指揮して見事に暴動の種を消し止め、処刑も予定通り行われます。

 

ダルタニャンはその後、国王に命じられた使命であるフーケの領地の視察を行います。

ブルターニュのフーケの支配地に変装して潜入したダルタニャンはさらにその沿岸の島ベルイールに渡ります。

そこでは大規模な要塞化の工事が行われており、明らかに国王に対しての要塞整備と見られました。

ところがそこで工事責任者としていたのがポルトス。

ダルタニャンはポルトスにはうまくごまかして説明します。

そしてポルトスと共に向かったのが沿岸のヴァンヌの町で、そこに司教としていたのがアラミスでした。

つまりアラミスはフーケ財務卿の腹心としてベルイールの要塞化をはじめとした国王への反逆を取り仕切っていたのでした。

ダルタニャンはアラミスにもうまく話を付けたはずでしたが、その何倍も上を行くアラミスはダルタニャンの秘密の使命を見抜き、パリのフーケにあてて緊急の報告をポルトスに持たせ、ベルイールを国王に献上という奇策をやり遂げます。

 

こういった権力を争う丁々発止の闘争が行われている一方、ラウルを巡る情勢は平和裏に動いています。

王弟殿下にイギリス王女が嫁ぐこととなり、その侍女として多くの貴族の娘が任命されるのですが、その中にラウルの許嫁、ルイーズも入ることとなります。

ルイーズの友人、オール・ド・モンタレー嬢がその恋人マリコルヌの力で侍女の辞令を手に入れたのですが、ルイーズもパリに行きたいという希望から無理やり王弟妃の侍女となることになりました。

それを知らなかったラウルは王弟殿下結婚の時に妃の侍女としてルイーズがいることに驚き、そのまま宮廷生活を続けることは危ないと思いルイーズとの結婚を早めることをアトスに懇願します。

アトスはすぐさま国王のもとにその許可を得に行くのですが、ルイ14世はアトスがこの結婚に乗り気ではないことを見抜き、しばらく様子を見ることと命じます。

 

それでは印象的な場面の紹介。

フーケの謀反の証拠を探しにベルイールまでやってきたダルタニャンはそこでポルトスと出会います。

6人の男が動かそうとしても動かない巨石に苦労していると、

「その時、男はやおら身を起こした。さあ、並べおれがやり方を見せてやる。

羽根飾りの男は石材に近づくと身をかがめ石の下に両手を差し入れ大石を地上30cmの高さまで持ち上げた」

「畜生」ダルタニャンは思わず叫んだ。「こんな力業ができるやつはたった一人しかしらないぞ」

「なんだって」大男がこちらを振り返った。「ポルトスがベルイールに来ていようとは」