爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ダルタニャン物語5 復讐鬼」A・デュマ著

危ういところをモードントの魔手から逃れた4人ですが、ここからダルタニャンの奇策が続きます。

 

普通ならば海岸へ出て船を探しフランスへ帰るところですが、その逆を行きさらにチャールズ国王の奪還も目指します。

そのために、一足先にロンドンへ向けて出発した国王護送の一団を追いかけ、さらにそこには自分たちの逃亡の情報も入っていないと見極めて護送隊の隊長グロースロー大尉に取り入ります。

グロースローは若い頃商売でフランスに滞在しており、フランス流の賭け事などを懐かしく思っていたので、ダルタニャンの策略に引っかかりチャールズの居る前での勝負を行うことを承諾します。

そしていよいよ実行という寸前にクロムウェルの本隊が追い付き、あやうく4人は逃れます。

それでもさらにロンドンを目指し、国王奪還の努力を続けます。

 

形ばかりの裁判でチャールズ国王死刑の判決を出しますが、その施行には断頭台の設置や首切り役人の手配など少々の時間が必要となり、そこにダルタニャンはつけ込みます。

ロンドンの首切り役人を皆拉致監禁し、さらに断頭台建設の職人として潜入しその下部に逃れる抜け道を作ります。

しかし首切り役人には代理として希望者が出たため、予定通りの死刑執行に。

ちょうど断頭台の下で作業していたアトスの真上で国王の死刑執行の儀式が執り行われます。

下にアトスがいることは承知していた国王は、アトスに礼を述べ、さらに埋蔵金のありかも告げて亡くなります。

呆然としてしまったアトスですが、ダルタニャンだけは正気を保ち、代理として国王の首を切った男の後をつけ、それがモードントであることを確かめ、4人で襲いますがすんでのところで取り逃がしてしまいます。

 

これまでと思いフランスに逃れようとかねて手配していた船を目指しますが、その船にはすでにクロムウェルの手が回っており、船長としてグロースロー大尉が、そしてモードントも乗り込み、さらに船室には大量の火薬が仕込んでありました。

そうとは知らない一行は失意のうちにイギリスを離れることになりましたが、従者たちが酒を飲もうと船室に入り、火薬を発見し大慌てとなります。

何とか一行を目覚めさせ、船の後ろにロープで括り付けてあった小舟に乗り込みます。

この小舟はモードントやグロースローが火薬に火をつけたらすぐに乗り込んで逃げるつもりだったものでした。

しかし先に銃士一行が乗り込んだために逃げることができず、さらに火薬には火をつけてあったため、グロースロー一味は船と共にあえなく爆死してしまいます。

モードントのみは海中に逃れますが、銃士たちの小舟に助けを求めるもダルタニャンたちは寄せ付けようとしません。しかしアトスのみはモードントが哀れと思い手を出しますが、その手を握って海中に引きずり込み一緒に死のうとします。

あわやというところでアトスは短刀でモードントを刺し、一命をとりとめます。

 

何とかフランスに逃れてきた一行ですが、危険があるとしてダルタニャンとポルトス、アトスとアラミスに分かれてパリを目指します。

アトスたちはさほど危険もなくフロンドの乱でごった返すパリに入りますが、ダルタニャンたちの行方はしれません。

実は、マザランに派遣されてクロムウェル軍に加わったはずのダルタニャンたちが逃亡したという事実はすでにクロムウェルからマザランに報告されており、フランス帰国後に逮捕され監禁されたのでした。

そこはリュエイユのマザランの別荘にある施設でした。

 

そのような処遇に我慢ならないアトスはアンヌ・ドートリッシュ太后に直接ダルタニャン釈放を申し入れますが、太后により逮捕され同じくリュエイユに送られます。

ところが一応ある程度の敬意を持たれていたアトスにはその後マザランが面会に行くと約束します。

それを漏れ聞いたダルタニャンはこれぞ好機とばかりに策謀をめぐらします。

マザランは別荘の警備にスイス人傭兵を用いており、監禁施設にはその二人に警備させて入ります。

その警備兵をポルトスの怪力で締め上げ軍服を奪い、マザランに呼ばれると何食わぬ顔で従いました。

するとマザランはすぐにアトスの部屋に向かうのではなく、地下施設に入ります。

実はそこはマザランが隠し財産を大量に保管しているところでした。

その一部始終を目にしたダルタニャンはそれも取引材料とします。

アトスの部屋に入ったマザランはそこで正体を明かしたダルタニャンに逆に人質とされ、別荘を脱出、そこから近いポルトスの城に向かいマザランを脅迫してフロンドの乱終結と自らの条件の受諾を迫ります。

これで、ダルタニャンの銃士隊長就任、ポルトスの男爵授爵などが決まります。

 

これでフロンドの乱の一応の終結となるのですが、不満分子は国王たちのパリ帰還を阻もうとします。

国王の馬車にはダルタニャンが、マザランの馬車にはポルトスが乗って警護しますが、暴徒たちが襲い掛かり必死で防御します。

そこでダルタニャンが倒したのがローシュフォール伯爵、ポルトスが倒したのがパリの乞食たちの首領のマイヤール、実はあのボナシューでした。

反乱が終わり、また3人の仲間たちはそれぞれ離れていき、ダルタニャンのみがパリに残ることとなります。

 

印象的な場面は何といってもチャールズ処刑でしょう。

「チャールズはひざまずいて十字を切り、床に接吻するかのように口を床板に近づけた。『ラフェール伯爵、そこにおいでかな、お話ししたいんだが』国王はフランス語で話しかけた。『忠勇無双の働きありがとう。私が助からなかったのはしょせんそういう運命だったのでしょう』(中略)

『リメンバー』この言葉が終わるか終わらないうちに恐ろしい一撃を受けて処刑台の床板が揺れ動いた」

 

あとは小舟に逃れた一行のところにモードントが泳ぎ着き助けを求める場面です。

「モードントは必死になって身体を持ち上げ最後の望みとばかり、差し伸べられた手に力いっぱいしがみついた。モードントは目をギラギラ光らせ得も言われぬ憎悪にみちた声音で叫んだ『お母さま、いけにえは一匹しか差し上げられませんが、ともかくお望み通りのやつをつかまえました』、(中略)(モードントを刺し殺し助け上げられたアトスは)『息子がいたんでね、死にたくなかったのさ』」