爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ダルタニャン物語3 我は王軍、友は叛軍」アレクサンドル・デュマ著

普通はダルタニャン物語は1,2巻の三銃士の部分が有名なのですが、デュマはその続きも書いていました。

 

時は1648年、前作より20年経った時の出来事です。

国王ルイ13世は死去し息子のルイ14世が即位してしますがまだ幼いため母后アンヌ・ドートリッシュが摂政として政治を行っています。

それを補佐するのが宰相にして枢機官のマザラン、これも前任のリシュリューが亡くなった後をついだのですが、イタリア出身ということで貴族たちの反感が強まっています。

さらに市民たちも税負担の重さに耐えかねて不満を強く持っています。

 

このような不穏な情勢の中、マザランは自分の意のままに動く有能な配下が無く不安を募らせていたのですが、そこで20年前の事件について耳に挟みます。

リシュリュー枢機官の王妃への策謀にわずかな顔ぶれで立ち向かい見事にやってのけた人物がいたことを。

そしてそれが自分のすぐそばで警護の職についているダルタニャンであることを知ったのでした。

そこでダルタニャンとその友人たちを配下に入れたいと指示を出したのでした。

 

ダルタニャンは前作最後に銃士隊副隊長の辞令を貰ったのですが、20年たち40歳になってもその職のまま毎日を勤めに励むのみでした。

当時の三銃士たちもその後すぐに次々と銃士隊を離れていき、今では消息もはっきりとしない状況です。

マザランから三銃士を集めるように指示されたダルタニャンは彼らについての情報を何とか探し会いに行くことになります。

なおダルタニャンの従者だったプランシェはフロンド派の活動家市民となっていましたが警察に追われる身となっていたためダルタニャンに随行することになります。

 

次々に探し出し元三銃士にマザランに仕えるように話すのですが、ポルトスのみは大金持ちになっていたものの爵位がなく周囲の貴族に馬鹿にされるため、男爵になりたいとの望みでダルタニャンに同行することを決めたものの、アトスアラミスには断られます。

なお、アトスの屋敷では同居する美少年ラウルと初めて会うことになりますが、ラウルがこの先も重要な役どころとなります。

アトスはダルタニャンと別れたすぐそのあとにパリに出るのですが、それから多くの活動をするにあたりラウルの身の振り方を決めておく必要に迫られます。

まだ15歳の少年ながら、貴族として相応しく軍務に服することとします。

そのためにラウルの本当の母親、シュヴルーズ公爵夫人に面会し紹介状を貰うこととします。

実はアトスとシュヴルーズ公爵夫人はかつて旅先での一夜の出来事でラウルをもうけたのでした。

その後、シュヴルーズ公爵夫人はリシュリュー枢機官と反目し追放や亡命といったことになったためラウルを育てることができず手放したものをアトスが引き取ったのでした。

それを知らなかったシュヴルーズ公爵夫人はアトスにその話を聞かされます。

そしてコンデ大公への紹介状を書き、ラウルの従軍が決まります。

すぐさま戦地に赴くラウルを伴い、アトスはサンドニの歴代国王の墓地を訪れラウルへの教訓を語ります。

 

ちょうどその頃、ヴァンセンヌの牢獄に監禁されていた反乱軍の首領格のボーフォール公爵を脱獄させようという計画が進行しています。

その中心となっていたのがアトスの従者のグリモーで、うまくボーフォール公の監視役として入り込みます。

さらにローシュフォール伯爵をはじめ多くの仲間が集結し、首尾よく脱獄させることに成功します。

 

マザランにその脱獄の報せが入ったちょうどその時、ダルタニャンがポルトスを伴いマザランに報告に訪れます。

これこそ好機とマザランはダルタニャンらにボーフォール公逮捕を命じ、ポルトスや配下の護衛士を伴い追跡を開始します。

 

馬を乗りつぶすほど駆け通し、最後にボーフォール一行に追いつきますが、その時にはダルタニャンとポルトス二人だけ、それでもボーフォール公一行数十人と渡り合い、何人かを倒しますが最後に相手となった二人は最強、そしてわずかな光で顔を見るとアトスとアラミスであることが分かります。

それであきらめたダルタニャンは引き下がることとなります。

 

翌日、その件につき4人は新王宮前広場で話し合いますが、不信感を募らせるダルタニャンとアラミスに対し、アトスは心の底から語り合いなんとか和解にこぎつけます。

この先対立する派に属し戦場で対戦することがあっても、4人は決して戦わないということ。

それを誓い合って別れることになります。

 

それではこの巻での印象的な場面を。

アトスは子息ラウルを軍務へと送り出すのですが、その前に歴代国王の墓が並ぶサンドニを訪れラウルに国王に仕える貴族としての教訓を与えます。

「王権こそは絶対に過ちのないもの、地上における神の霊、たんなる土塊をかくも偉大にかくも神聖にする天のひらめきだからだ。」

「わたくしは神を崇め王権を尊敬します。一身を捧げて国王に仕え、国王なり、王権なり、神のために一命を捧げる覚悟でございます。」

このように答えたラウルがどのような運命にさらされるのか。最後まで読んだ人には分かります。

 

そして新王宮前広場での4人の和解の場面。

「アトスはおもむろに右手を上げ、『このおごそかな夜、われわれを眺め、僕たちの言葉に耳を傾けたもう神のまえで誓う。僕の剣は今後決して君たちに触れることはないだろう。』、『戦場で顔をあわせたら、たとえ激戦の最中でも新王宮前広場と呼び交わし、その一言で剣を左手に持ち替え右手をしっかり握りあうこととしよう』

これでその後も敵味方に分かれる展開となっても友情は続くこととなります。