爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

レジオネラは「大したことない菌」か、まったく困った温泉旅館社長会見。

福岡市近郊の二日市温泉の大丸別荘という老舗温泉旅館の温泉で基準を大きく越えるレジオネラ属菌が検出されるというニュースが流れました。

その社長の会見が行われ、数々の「正直な」感想が発せられるという異例の事態で大きなニュースとなっています。

news.yahoo.co.jp

 

なお、こういった謝罪会見ではとにかく「平謝りに謝り余計なことは言わない」というのが鉄則なのですが、この社長にはそういったコーチをする人もいなかったのでしょうか。

しかし、正直に思う所を話していたのは上辺だけは反省しているように見せかけるだけの他の人々よりはマシかもしれません。

何より、こういった所を担当する人々の「普通の感覚」が見えてきて参考になります。

 

その会見のなかで、「レジオネラなど大した菌ではないと思った」というのがあり、これはちょっと大問題だと感じました。

とはいえ、「普通の人々」がどのような細菌を「大した菌」と思うのかということもよくは分かりません。

なにしろ、頻繁に騒がれているカンピロバクターの食中毒があっても、いまだに鳥刺しやレバ刺しを出し続ける飲食店が多いのですから。

 

それでもまあ、専門家とまでは言えませんが、少しは細菌などについて知っている立場としては少し解説をしておきたいと思います。

 

レジオネラという細菌は比較的最近になって発見されました。

レジオネラ - Wikipedia

1976年にアメリカのペンシルバニア州在郷軍人会の大会が開かれ、そこで原因不明の肺炎に多くの人が感染し、34人の死亡者が出ました。

この原因が当時の知識では不明だったのですが、患者を詳しく検査して新種の細菌が発見され、それがこの感染の原因であることが確かめられました。

なお、学名のLegilnella は「在郷軍人会」のlegionnaireにちなんだものです。

それがLegionella pneumophila という好気性グラム陰性桿菌ですが、人工培養が極めて難しく、それが発見しづらかった理由であったようです。

上記Wikipediaにもありますが、グルコースなどの糖は利用できず、システインなどのアミノ酸が必須、至適pHが6.7‐7.0と狭い、生育温度が36℃と、培養条件が厳しいということです。

 

ただし、人工培養が困難であっても環境中では生育しやすく、至る所に生息しています。

土壌中や水中などに繁殖していることが多いのですが、人間界では空調機器(冷却水を大量に使います)や温泉施設などに至適環境がありそこで生育しています。

レジオネラはアメーバなどに寄生していることがあり、温泉の循環設備などにアメーバがバイオフィルムを形成してコロニーを作るとき、その中にレジオネラも繁殖することがあり、簡単な清掃では取り除くことが難しい場合があります。

 

注意すべきはその人間への感染経路と病原性であり、呼吸器系から肺に取り込まれ、肺胞の細胞に侵入することで感染します。

あくまでも肺炎を引き起こすものであり、たとえば含まれた水を飲んでも危険性は少ないのですが、温泉などで菌を含んだ水がミスト化し、それを吸い込んで肺に到達すると感染する危険性があります。

特に免疫機能が低い高齢者などは危険です。

 

感染発生はおそらく以前は起こっていても知られていないだけだったのでしょうが、現在ではすぐに原因が突き止められますので、頻繁に起きていることが分かります。

レジオネラ症 - Wikipedia

上記の記載を見ればこのところ毎年のように集団感染が起きており、死亡者も数名ずつ出ています。

とても「大したことがない」などとは言えないようです。

 

特に危険なのが空調の冷却装置で繁殖していた場合で、それが空調の送風に乗って施設内に運ばれることです。

最初の在郷軍人大会での集団感染もこれが起きていました。

同様に、加湿器などでも霧状となりますので危険が大きいものです。

また温泉ではお湯を循環利用する場合にそのろ過装置に菌が繁茂するということもよくあり、装置の管理の重要性が存在します。

 

以上のように、現在の温泉の大部分はお湯の循環利用が行われており、洗浄などの維持管理が不適切だと危険性があります。

他にも空調設備のほか、室内でも水がたまったままほとんど変えていないという場所では繁殖することがあります。

くれぐれも軽視することないように願いたいものです。