題名の最初の文字だけで判断し、音楽の表現などについて書かれた本かと思って図書館から借りてきましたが、その後の「心の哲学」の言葉通り、非常に「哲学的」な本でした。
難解極まりないというものでした。
著者の渡河さんは美学や心の哲学が専門と言う哲学者、本の書き方もそれを思わせるような難しさとなっています。
最初のあたりは、音楽を聴く経験「聴取経験」とは何かというところから始まります。
美的判断、美的経験、美的性質など美的なものに対する概念というものを説明していくのですが、言葉の定義から始まりそれに対するこれまでの哲学者たちの議論の紹介など、厳密性を高めて曖昧な解釈を許さないように進められます。
音楽の評価として「良い」「悪い」「素晴らしい」などと言われることがありますが、これらはすべて美的判断としては使えません。
客観性がないからということです。
しかし客観性を持つ術語もあり、「けばけばしい」「混沌としている」「統一感がある」「華奢な」「繊細な」「ダイナミックな」は内容がかなり特定されており客観性もあるということです。
よく分からん。
音楽の悲しみというものは聞き手の悲しみとどうつながるのか。
作曲者の意図とは違うところで悲しみを感じることもあります。
ジングルベルは普通は楽しい歌ですが、これが流れるクリスマスの日に恋人と別れそれ以降ジングルベルは悲しい曲と感じる人もいるでしょう。
これは個々人の経験とそれに対する感情の動きがある曲と連結してしまい、悲しみと感じるからです。
また音楽には器楽によるメロディーだけでなくつけられた詩の内容で楽しい・悲しいなどという意味が付けくわえられることが多いのですが、この本ではこれはまた別の意味が強いということで省かれています。
中には曲想や演奏は楽しいものなのに、歌詞の内容はとても悲しいものだという歌も存在します。
あくまでもメロディーが呼び起こす感情だけにしぼって話を進められます。
とはいえ、最後まで読んでも結局何なのかよく分からなかったというのが本当のところです。
まあ部分的には理解できるところもあるのですが、総体的には降参。