爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「地図でたどる世界交易史」フィリップ・パーカー著

交易というものは人類が定住し文明を開いてきたかなり早くから行われてきたようです。

それはグローバル世界と言われるようになった最近ではさらに重要度を増しています。

 

そういった交易というものの歴史を目で見たらどう感じるか。

歴史上の人々もそれを思ったようで、かなり古くから地図に残していました。

そういった「交易の歴史」を当時の地図でたどろうという本です。

掲載されている地図は少し後の時代に作られたものも幾分かは含まれているものの、多くは同時代に描かれたもので、さすがに近代以前の地図は分かりにくいと思えるものもありますが、これを持って実際に交易に出た人もいたのかもしれず、実用上は十分なのでしょう。

 

一番古い時代のものは本書最初に掲載されている、紀元前6200年頃のチャタル・ヒュルクという遺跡から出土した壁画です。

アナトリア地方南部のこの地域は古くから黒曜石の産地であり、それを運んで各地の産物と替えてくるという交易の中心地だったようです。

黒曜石を生み出すもととなったハッサン火山の噴火の様子を描いた地図です。

 

古代ローマ帝国は国内、国際の交易を盛んに行いました。

しかし国が衰えていくと交易もできなくなり近隣の産物だけで暮らす中世に移行していきます。

しかしその時代でも交易を盛んに行っている地域はありました。

ビザンティン帝国やエジプトはローマの没落には関わりなく繁栄をつづけ、周囲との交易も盛んなものでした。

 

新大陸の発見とその植民地化以降、世界的に盛んになった交易は世界中の社会を大きく変えてしまいました。

奴隷貿易、砂糖交易、綿花交易、コーヒー交易、茶交易と続けられると、ヨーロッパの欲望に従わせられる世界というものが哀れに見えてきます。

 

本書の最後は「世界交易を脅かすもの」と題しCovid-19新型コロナウイルスの感染状況を表わす地図で締められています。

まあ人類が破滅しないかぎり交易というものは続いていくのでしょう。