爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ビジュアル パンデミック・マップ」サンドラ・ヘンペル著

今回のコロナウイルス感染の広がりも世界に大きな影響を与えていますが、人類の歴史ではこれまでにも何度も社会を揺るがすような感染症の広がり、パンデミックというものが起きていました。

そのパンデミックを記した書物は数多いのですが、本書の目新しいところはその感染の広がりや発生の歴史などを地図で分かり易く表示した点にあります。

 

感染症はその感染伝播の形式別にまとめてあります。

空気感染症ジフテリア・インフルエンザ・天然痘・麻疹・結核他)

水系感染症コレラ赤痢・腸チフス

動物由来感染症マラリア・ペスト・発疹チフス・黄熱・ジカ熱)

ヒト・ヒト感染症(ポリオ・エボラ・HIV・梅毒)

といった具合です。

 

本書の日本発行は2020年3月ですが、イギリスでの原著出版は2018年ですので、当然ながらCOVID-19は含まれていません。

 

感染症の症状や性質、これまでに起きた大発生時の状況などがコンパクトにまとめられ、必ず最低1枚の地図が添えられています。

 

ただし、地図の使い方は一様ではなく、歴史的に各地の大発生の起きた時代を示しているものもあれば、特定の大発生(たとえばインフルエンザの1918年、1957年の大流行の広がり)、さらに現在も感染発生中のものについては現在の各地の感染者数などを示しています。

そのため、地図によって色分けや矢印の意味が異なり、直感的に見て誤解してしまうということも起きがちでした。

まあ、しっかり見ればすぐに分かりますが。

 

チフスサルモネラ属のチフス菌によって感染します。

しかし、「健康な保菌者」が存在します。

自身は症状が出ないものの、体内にチフス菌が棲息するというものです。

それが初めて明らかになったのが、1906年アメリカのニューヨークで起きた感染発生の時でした。

ロングアイランドの別荘で集団発生したのですが、その原因がそこで働いていた料理人のメアリー・マローンでした。

彼女は罪に問われることはなかったのですが、隔離処置を強制されました。

3年経過したのち、今後料理人はしないことを条件に解放されたのですが、やはり料理人の方が給与が高いために偽名を使って料理人として働きだし、また感染者を出して死者まで発生しました。

メアリーはその後再び隔離処置としてとじ込まれることになりました。

個人の権利と社会の安全の大きな問題の最初だったようです。

 

この本の新版を発行するなら避けては通れない新型コロナウイルスCOVID-19ですが、もしも地図にするならどうなるのでしょうか。

やはり、中国武漢発生から中国国内流行、そこから世界へとなるのかどうか。

まだまだ分からないことが多いようです。