リスク学者の永井孝志さんが定期的に更新され、リスク学関連のニュースを解説している「リスクと共により良く生きるための基礎知識」ですが、今回は「マイクロプラスチック」について書かれていました。
2020年4月に日本学術会議が公表したマイクロプラスチック汚染に関しての提言を題材としています。
マイクロプラスチックによる海洋汚染が進んでいるということ、そしてそれによる海洋生物やヒトの健康被害についての懸念が書かれているのですが、リスク学から見ると突っ込みどころがたくさんあるようです。
最初のところではマンガで「環境問題の研究費が取りづらくなっているので新たな汚染源を取り上げたのでは」という趣旨を述べていますが、まあそういった側面もあるのかもしれません。
この提言の中心は、4節の海洋生物への取り込み、そして5節の生物への影響というところだということです。
そして、そのどちらもリスクというにはその量的な評価が無く、ぼんやりと何となく危険と言っているだけのようです。
マイクロプラスチック汚染では、マイクロプラスチックそのものの危険性と、それに含まれる化学物質が溶出しそれによる危険性が考えられますが、どちらもその現実の自然界での存在量よりはるかに大きい濃度での実験結果しかなく、現実のごく微量の汚染でどの程度のリスクがあるのかはまったく検討されていません。
このような議論で、「もっと汚染が進めば大変なことになる」という予防原則での規制が進めば、予防原則の濫用にもなり兼ねません。
日本近海でのマイクロプラスチック汚染の原因も検証がされておらず、どこを止めれば汚染が抑制できるかも分かりません。
なんとなく雰囲気だけでレジ袋やストロー制限に流れていったということでしょう。
最後の「マイクロプラスチック問題のからくり」というまとめで書かれているように、
「海洋生物から検出されているという情報と、(現実よりも)高濃度で曝露されるとこんな影響が起こるという情報の組み合わせにより、リスク評価なしに悪いものと決めつけるストーリーが進んでいる」
というのが現状だということでしょう。