爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

エネルギー使用量半減のための社会改革 6 産業はどうなるのか

エネルギーを使用削減しなければいけないという点を資源の観点からここまで述べてきましたが、実際にそれを進めようとすれば現在の社会経済をどうするのかということを考えていかなければなりません。

 

特に、「産業をどうするか」というのは大問題です。

これなしにはあらゆるエネルギー論は意味がありません。

よく、「低エネルギー社会」とか「再生エネルギー」といった話は出ますが、そのためにどのように社会を変えていくかという話が述べられることはありません。

省エネルギーをしましょうとか、代替エネルギーに切り替えとか、そのような程度のもので今のままの社会が続いていくような幻想を持っているのでしょうが、実際はそんなものはどうしようもないでしょう。

省エネルギーもこれまでにギリギリのところまで下げられているので、さらに10%落とすというのも大変なことです。ましてや50%削減などできるはずもありません。

 

やはり、今後は「削除すべき産業」というものを排除していくことが不可避です。

削除すべき産業とは「エネルギー高消費産業」です。これらは今後のエネルギー削減社会では残すことはできません。少なくとも日本で操業することは大きな危険を伴います。中東やロシアでやってもらいましょう。(何が「危険」かということはこれまでにもエネルギー文明論の中で語っているので繰り返しません)

 

問題は、そのような「エネルギー高消費産業」とは何かということです。

ちょっと考えると、電気・機械産業や化学工業、金属産業などが思い浮かびますが、そればかりではありません。現代の産業のほとんどはエネルギーを多く消費します。

伝統的な産業であまり工程を変えていないものだけが低消費と言えるでしょうが、例えば農林水産業も多くのエネルギーを消費しておりエネルギーがなければほとんど操業できないものになっています。

 

では全部の産業は日本では残れないのかと言ってしまったらそれも過激すぎるでしょう。いずれは変換していかなければならないのですが、当分は続けることはできるものも多いと考えます。

しかし、「できるだけ速やかに」撤退すべきものはあります。

 

まず多くを削減すべきなのは、自動車関連産業です。移動・運送の項でも述べますが、現代のような自動車社会を続ける限り低エネルギー社会は実現不可能です。

ただし、この50年以上をかけて作り上げてきた自動車依存社会はそう簡単には変換できません。だからこそ強い意志を持って変えることを始めなければなりません。

まだ電気自動車とか、水素燃料電池自動車とか言ったたわごとを述べる人も多いでしょうが、これらは石油やガスを使う現在の自動車と比べてもはるかに資源とエネルギーの浪費をもたらします。今のような形の移動手段は将来残せる道はないと悟るべきです。

ほんの一部の公共用のバス・トラックのみを存続させ、それ以外は海外に撤退願うだけです。(もう始まっていますが)ついでに社員とその家族も連れて行って欲しいのですが。

 

 電気・機械工業は縮小は避けられないと思いますが、その速度は緩やかなものになるでしょう。現在の機械文明を次の段階にソフトランディングさせるためにはある程度の期間はこれらの産業は稼働させる必要があります。

さらに化石燃料の使用をできるだけ早く削減するためにも、電力への依存はしばらくの間増加せざるを得ないでしょうからその装置も一定期間は使っていくことになります。

 

化学工業は化石燃料の利用そのものですので早く縮小すべきなのですが、これも急激な削減は難しいでしょう。ある程度の利用が残存するのは避けられないものです。しかしできるだけ速やかに依存から抜け出す必要はあります。

 

現代の主要産業ともいうべき、情報通信については過剰な施設などは不要でしょうが、あえて制限する必要もないように思います。

グローバル経済社会では情報通信の高度な利用というものが不可欠ですが、エネルギー削減社会ではグローバル化は不可能になります。そうなれば遠く離れた地球の向こうのことなど知ったところでほとんど関係ないことになり、自然と通信の必要性も薄れるのではないかと思います。

 

食品工業や繊維など、生活必需品については今後も存続していくのは当然です。ただし、これも現在のような大企業支配が続くことはないと考えます。流通経費がどうしても上昇しますので地場産業の優位性が増すでしょう。

 

流通小売業についても同様です。スーパーコンビニの全国支配というのはあくまでも格安運賃での流通支配が行われることが前提であり、タダ同然でトラックを走り回らせる体制が崩れれば同様に崩れていくでしょう。政策としてそれをうながす必要もないでしょう。

 

以上のように、産業のエネルギー削減ではとにかく「脱自動車社会」というのが鍵になります。これは「明日から自動車には乗りません」などといった簡単なものではありません。

どこに住んでどこに通い、どういう仕事をするかということを根本から組み立てなおす必要があります。

すぐにできることではないのですが、目標を定め早く手を付けなければ手遅れになるでしょう。