爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

すでに「エネルギー供給が減っていく」時代に入ったのではないか。

脱炭素化などと称し化石燃料使用から自然エネルギーと言われる太陽光発電風力発電へ転換するなどという動きが強まっていますが、相変わらず火力発電の電気頼り、自動車交通などの移動機関はほとんどが石油系燃料という状態に変わりはありません。

 

しかし、このところ電気料金の高騰、自動車燃料などの高止まりが止まりません。

そこにはロシアのウクライナ侵攻に対して取られた制裁処置によりロシア産の重油天然ガスが止まったためだと理由付けされています。

 

本当にそうだろうかというのがこの文章の主題です。

 

オイルピーク

今はあまり触れられることもありませんが、オイルピーク説というものがありました。

誤解している人が多いのですが、石油が枯渇するということを言っているのではなく、「石油供給の伸びが無くなり、徐々に減少していく」ことを示しています。

そのため、「まだ石油は十分にある」などと言う変な反論をする人が多かったのですが、「やがて減少する」だろうということを否定できる人は少ないでしょう。

 

今回のエネルギー価格高騰はオイルピークと何か関係があるのか。

主因ではないことは確かですが、無関係とも言えないでしょう。

 

★ロシアの経済制裁だけがエネルギー価格の高騰の原因か

ロシアのウクライナ侵攻直後から行われた経済制裁でロシア産の原油天然ガスの輸入が禁止され、とくにそれに依存していたヨーロッパ各国でエネルギー不足が大きな影響を出し他のルートからの供給を求めることとなりました。

それにより原油天然ガスをはじめエネルギー価格が上がりました。

世界のエネルギー需給に占めるロシアの存在感からみればそれもやむを得ないことだったのでしょう。

しかし、ロシア産の天然ガス原油は結局は中国やインドなどへの輸出、そしてそこを経由して世界各国へと流出し、流通量としては変わらなくなってしまいました。

そのため、ロシア産エネルギーの流通ができないために価格が上昇しているということは無くなったはずです。

 

OPEC原油価格の下落を心配し生産量を減産しているのはなぜか。

OPECにロシアも加えた石油輸出国は原油価格が下落しているとしてさらに減産をすることを決めています。

これが「自然エネルギー」などが多くなったために売れなくなったというのなら脱炭素化推進の人々にとって理想的な展開なのでしょうがそうではないでしょう。

やはりコロナ禍からの回復がまだ遅れ、その上に景気回復以外の要因によるインフレの高度な進行により経済活動にまで負の作用を及ぼしているのでは。

まだまだ世界の化石燃料消費量の推移は世界全体の景気すなわち経済成長率と極めて深く結びつき連動しています。

化石燃料の消費が拡大すれば経済も成長する、そういったものから脱却するにはまだ長い時間がかかりそうです。

 

★それでも石油価格や電力料金が高いのはなぜか。

OPEC原油価格下落への対抗処置があるとはいえ、実際に消費国が購入する原油価格は低いとは言えません。

高いままでさらに日本政府が実施してきた原油価格を押し下げるための補助金支給が徐々に減らされていますので、消費者価格も徐々に上がっています。

 

★色々な情勢は石油あまりを表しており、供給減少を意味していないのではないか。

こういった情勢は一見したところ石油を中心とした化石燃料エネルギーの供給は需要を十分にカバーしており、エネルギー供給が先細りになるという方向とは逆のように見えます。

しかし、それでも「供給が減少していく」という予測になるのはなぜか。

 

産油国の減産という動きがあまりにも不自然だからです。

産油国アラブ諸国をはじめとして石油産業での収益が莫大なため他の産業の育成ということに立ち遅れており、化石燃料離れとなった場合に国自体の生き残りが危うくなると言われています。

しかし、金を注ぎ込みそれを目指してもなかなかうまく行きません。

あまり自らが働くということを実感できない連中が社会の指導者層ですからそうは進まないとは思いますが。

それでも現状は石油の収益頼りであり、機会があればより利益を上げようとするはずです。

それなのに、さして原油価格が下落しているとも思えないのに、各国が協調して減産とは。

産油国といっても様々で、サウジアラビアはもっとも原油埋蔵量が多いのですが、その他の国はそれほどでもありません。

それらの国は原油を採掘できる時にできるだけ利益を上げておきたいはずですが、今は各国協調せざるを得ない。

実はそういった産油国が多くなってきたのではないかと考えられるわけです。

 

産油国にとって、自国の原油の残存埋蔵量というものはトップシークレットとして隠しておきたいものです。

それが知られ、その国の埋蔵量はあとわずかなどと言うことが知れ渡ると国の存立が危うくなります。

そのため、その実数を粉飾した過剰な原油埋蔵量を合計したものが、現在の公式集計であり、本当のところはかなり少ない可能性もあるのではと疑っています。

 

そういった国々の窮状を何とかするのが、産油国協調での減産であるのかもしれません。

 

★石油や天然ガスの供給が実際には減っていくとどうなるか。

脱炭素化と称しこれを希求しているかのような世界情勢に見えますが、実際には石油や天然ガスが無ければどの国もエネルギー需要を満たせません。

これは現状では風力発電太陽光発電などのいわゆる「自然エネルギー」の装置を作り出すにも化石燃料に頼っているということからも言えることです。

つまり、化石燃料の供給が減りその価格が高騰すれば、自然エネルギーの発電装置の製造・建設の費用も高騰するということになります。

それがコストに跳ね返れば電力料金はさらに高騰します。

つまり、現実に減少している化石燃料エネルギーの総量よりさらに激しく、自然エネルギーの供給量は減少していくということになるでしょう。

 

とにかく、「エネルギー使用量をどんどんと減らす」社会を実現していくことが急務だということです。

気候変動などはもはやはるか先にしか関係してこない問題です。

それよりも目前に迫ったエネルギー供給の逼迫を考えるべきでしょう。