以前に読んだ環境倫理の本で感銘を受けた加藤尚武さんの本ということで期待して読んだのですが、それほどではありませんでした。
よく見てみると加藤先生は編者ということで、実際に執筆したのは30人近い人々です。執筆者紹介欄を見ると加藤先生の教え子の人も多いのでしょうか。
そのためか、環境問題に関して少しずつ触れただけの総花的解説と言う感じ、はっきり言えば「玉石混交」というところです。
内容は1.環境再生、2.実際の手法、3.環境技術、4.環境と政治経済法律、5.環境思想といったもので、それぞれについてみればやや食い足らない感は否めません。まあこれで当たりをつけて専門書を見れば良いのでしょうが。
本書出版は2004年です。したがってやや時代錯誤の点が見られるのも現在から言えば仕方のないことで、「環境にやさしいエネルギー」のところで「原子力に対する見方は日本では非常に厳しいが、技術立国たる日本で原子力の安全性の問題が解決されなければ明日の日本はない」といった論調は今となっては書いた人も決して思い出したくないでしょう。
第25章に「持続可能性の定義論争」という章があり、この文章はなかなか見るべきところが多いと思いましたが、この章の執筆者を見ると加藤尚武先生その人でした。
もし21世紀の人類が化石エネルギーの資源すべてを使いきったとしたらその後の子孫にエネルギー資源が皆無であるという世界を残すことになる。という極めてまともな見方を短い文章で言い表しています。
やはり先生が一番。
もう少しこの辺りの本はいろいろ探してみたいと思います。