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爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「日本の真実 安倍政権に危うさを感じる人のための十一章」植草一秀著

植草さんの名前はスキャンダルで以前拝見しました。

痴漢事件の容疑者被告として報道され大きな話題となったものですが、そのときにはどのような活動をしている方かということを知らなかったのでその意味も不明でした。

しかし、本書のような著作を読むと非常に厳しい批判を政権や権力者たちに浴びせており、これがそのような事件に巻き込まれた原因かと思わせるものです。

 

章題のみを列挙します。

1.日本の支配者

2.戦後非民主化

3.小鳩の春

4.尖閣の罠

5.フクシマの嘘

6.日本を飲み込むTPP

7.成長戦略の正体

8.財務省の謀略

9.あべさまのNHK

10.絶望の警察、検察、裁判所

11.さまよえる群衆

 

このように、現在の安倍政権の批判が主ですが、民主党政権既得権益者の総攻撃を受けて潰された過程についても詳述されています。

信じられない人も多いでしょうが、こういった記述がかえって真実に近いものと感じられます。

 

日本の支配者は誰か、憲法では主権在民とされており、主権者は国民ということになっています。

しかし、現実では日本を支配しているものは、米国、官僚、大資本です。

さらにそれを支えているものは利権政治家、御用報道機関ということです。

つまり、日本の既得権者とは、米、官、業、政、電とまとめることができます。

米国は戦勝国です。日本はその戦利品であり米国が獲得した財産であるというのが真実です。彼らは戦後いちどもそれを手放すことはなく、それを脅かそうとしたものを直ちに葬り去ってきました。

 官僚機構と大企業もその構造を自らの利権と重ねて支配体制を強化してきました。

さらに、メディアもそれを支えて国民の意識を操作しています。

 

この支配機構に変化を加えようとしたのが2009年の政権交代でした。しかし、その誕生後ただちに既得権者たちは総攻撃を加えました。

その政権を葬り去るやいなや、安倍政権が「トリック&イリュージョン」を駆使して国会で絶対多数を確保し、好き勝手な政治を行うようになりました。

本書はそのトリックとイリュージョンを解き明かし、主権者たる国民が幸福を得るために真実に気づかせようということを目標としています。

 

小泉政権がつまづき、それに猛攻を掛けたのが小沢一郎でした。

2007年の参院選与野党逆転を果たしさらに2009年の民主党政権誕生となります。

しかし、それ以前からその誕生に危機感を覚えた既得権者の一員のメディアたちは民主党政権に対する攻撃を始めています。

鳩山首相とともに小沢一郎氏に対する攻撃も激化させました。

これは小沢鳩山の民主党指導者が米国、官僚、大資本の支配機構に楔を打ち込もうとしていたからです。

普天間基地の県外移設の方針や、官僚の天下りの廃止、企業献金の廃止等の方針を打ち出したためにこれをそれまでの支配体制への挑戦と捉えた者たちの総攻撃を引き起こしました。

西松事件陸山会事件という、とるに足らないようなことを掘り返し、秘書や議員の逮捕という露骨な戦法で小沢一郎の追い落としを図ったのでした。

植草氏はこの過程での検察などのやり口を日本政治史上最悪の人物破壊工作と呼んで批判しています。

 

米国追従に反対しようとした民主党政権を葬り去って立てた安倍政権ですが、これに対するアメリカのオバマ大統領の態度は冷たいものでした。

2014年4月にオバマが来日しましたが、安倍の懇願にも関わらずオバマは冷淡な態度に終始したそうです。

実質的な成果はほとんど無かったのですが、読売グループやNHKは偽装とも言えるオバマ来日の成果を報道しました。

尖閣諸島は安保適用範囲内」というオバマの発言を鬼の首でも取ったかのように報道しましたが、これは尖閣に中国が攻めてきた場合にアメリカ軍が出動するということではないようです。

日米安保条約では「日本施政下の領域」で適用されるということになっており、尖閣諸島はこれに当たるのですが、アメリカは尖閣諸島の「日本領有権」は認めていません。

アメリカは尖閣諸島の領有権についてはいずれの側にもつかないということを明確に述べています。

来日時の会見でもオバマは「尖閣問題について日中間で事態が悪化するのを看過するのは間違い」と明確に批判していますが、これを日本メディアはまったく伝えませんでした。

 

安倍政権のトリック&イリュージョンの一つに「成長戦略」の強調があります。

しかしこの成長戦略とは企業の利益を拡大することだけを指しており、国民が豊かさを実感できるような施策はほとんど含まれていません。

「成長と分配」ということを考えればよく分かりますが、安倍は「経済成長」だけを目指して進め、国民への分配にはほとんど気を配っていません。

その実態について植草さんは「日本をハゲタカ・ハイエナ・シロアリが食い尽くす」と表現しています。ハゲタカはアメリカ、ハイエナは日本の大資本、シロアリは官僚です。

健康保険の国民皆保険制度への変更はTPPでも狙われていますが、混合診療(保険内と保険外診療の並立)の解禁で狙われているのは医療保険への加入の拡大で、その医療保険分野へのアメリカ企業の参入が目標です。

その結果、保険内では大した診療もせずに保険外の民間医療保険の支払いを受ける分野だけに力が入れられるようになりそうです。

 

民営化の推進という点でもこのようなハイエナを潤すような国民財産の払い下げということが行われようとしています。

かんぽの宿の格安払い下げ問題というのがありましたが、国民の財産を不法に横流しすることが民営化というようなトリックが使われようとしています。

 

巻末のあとがきに、共同通信の2014年の世論調査が引用されています。

集団的自衛権に賛成か、原発再稼働に賛成か、消費税引き上げに賛成か、という設問に対し、いずれも反対が過半数でした。

しかし、「安倍内閣を支持しますか」という設問に対しては支持が50%を越えてしました。

日本の将来を左右するような重要課題には反対が過半数でありながら、それを推進して進めようとしている安倍内閣は支持が過半数。このような矛盾した態度を国民が取るのはなぜか、それが「トリック&イリュージョン」ということなのでしょう。

植草氏はまだ希望を失わず主権者たる国民の手に政治を取り返すことができると結んでいます。

 

日本の真実

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