自然の動植物の恵みを活かすといえば聞こえは良いのですが、そこには人間の欲望が関わってきます。
その相手の生物にとってはありがたくないことかもしれません。
この本の著者は世界各地を取材しそのような事例を自らの目と耳で探っていきます。
取り上げられているのは、アイダーダウン、アナツバメの巣、シベットコーヒー、シーシルク、ビクーニャの毛、タグア、グアノです。
ツバメの巣、グアノは聞いたことがありましたが、他は初耳に近い内容でした。
アイダーダウン、日本名ではケワタガモと呼ぶそうですが、北極圏などの寒冷地に住むカモの一種だそうです。
そのダウンはアイダーと呼ばれ非常に高級なものとして出回っています。
その主産地がアイスランドだそうですが、そこの住民たちは非常に丁寧にその採取を行っています。
カモたちの暮らしを妨げることなく、放棄された巣にあるダウンだけを採取し、天敵となるキツネなどは退治しカモを保護するような関わり方をしているそうです。
かつては同種のカモはシベリアにもいたそうですが、そちらではカモを獲っては肉を食べてダウンも取るといったことをしており、すぐに滅亡したそうです。
アナツバメは東南アジアに棲息するもので、ツバメとは種が異なります。
洞窟の中などに巣を作りますが、それはほとんどが鳥の唾液であり、ゼラチン質の成分のみから成っています。
これが中華料理で有名なツバメの巣で高価で取引されています。
この巣があるのが洞窟内などの岩の上で非常に危険なところであり、採取を行っていた人が落下して死亡するという事故も多発しました。
また巣を取り過ぎてしまいツバメが絶滅するということも起きたために現在では禁猟区や期間を設けるという保護策が実施されています。
なお、その味は中国人にとっては良い物と言われていますが、著者のような西洋人から見ると全く美味しいものとは言えないもののようです。
1922年にアメリカの生物学者リースらが、「アメリカ人があまり食べたことのない動物性食品」を味わうということをしました。
サル(とてもおいしい)、カワイノシシ(硬いが美味)、オポッサム(なかなかいける)などと言うものの中で、リースが期待していたのがアナツバメの巣だったのですが、その結果は「でき上ったのは味も素っ気もないゼラチン状の塊だった」ということです。
シーシルクというのは全く知らないものでした。
地中海で取れるシシリアタイラギという二枚貝が放出する「足糸」と呼ばれる繊維で、それを用いて布を作るのだそうです。
古代ギリシャやローマで作られていました。
現代でも全く無くなったわけではなくわずかにそれを採取し繊維として使うことがあるようです。
自然の生物の贈り物をどう生かすのか。
台無しにすることが多いように思います。
