日本経済新聞の社説で合成燃料への期待が書かれていました。
www.nikkei.com「脱炭素」だけを気にしていると科学の根本を見損なうという例でしょう。
しかもそれに「経済」の覆いがかぶさっているととんでもないことになります。
記事中にもあるように、合成燃料は「火力発電所などから回収したCO2と、再生可能エネルギーで水を電気分解した水素を掛け合わせてつくる」ものです。
そこには「燃料」というものがどういうものかという基本的な観念が欠如しています。
燃料は炭化水素であり、それを燃やしてエネルギーを得てそのエネルギーを様々な用途に使いますが、その際に炭化水素は酸素と反応して二酸化炭素と水になります。
この反応を化学反応式だけでなく、エネルギー反応まで見ていくと何がおかしいのか分かります。
つまり、炭化水素の酸化反応の逆反応を使って炭化水素(合成燃料)を作る場合は、酸化反応で生み出されるエネルギーと同量のエネルギーを加えてやらねばならないということです。
しかも実際の反応工程にはエネルギーのロスが不可避ですので、さらに多くのエネルギーを必要とします。
「火力発電所などからCO2を回収」などするためには大きな装置とエネルギーが必要です。
「再生可能エネルギー」はそれを得るために多大なエネルギーを浪費します。
そして最後に決定的なエネルギー浪費である「CO2と水素を掛け合わせる」反応が控えています。
これだけのエネルギーの浪費をするために、さらに再生エネルギーを使わなければならないのでしょうか。
他にもまったく非科学的な「脱炭素技術」は数多くありますが、その中でも一番ひどいのがこの「合成燃料」でしょう。