昔から何度も何度も話だけは上がってきてそのままという、エタノールが「CO2削減の救世主になるか」ということです。
toyokeizai.netそんなものに見込みがあるならもう50年以上も前になっているはずです。
エタノール(エチルアルコール)は主に糖分を原料に酵母で発酵させて作ります。
日本ではそれを清酒の増量用に使ったので、清酒メーカーに販売する原アル製造メーカーという企業が活動していました。
今では他の業種に移っていってしまいましたが、宝酒造、協和発酵、合同酒精、三楽オーシャンというのがその主要なメーカーでした。
この最後に付け加えるように挙げたのが私が勤めていた会社で、入社して最初の仕事も工場でのその製造現場でした。
日本酒用のアルコール販売も徐々に減っていたため、何か打開策がないかというときに国の補助もあって進めたのが「燃料用アルコール製造開発研究」という事業でした。
3社程度のグループがいくつか作られ、少しずつ違った視点から開発を競ったものです。
弊社のグループは光硬化樹脂を使いフラッシュ発酵法という装置で、当初は酵母を使ったもののアルコール発酵性の細菌、ザイモモナスという菌を使うことも予定に入れていました。
他のグループの計画は良くは知りませんでしたが、セルロース原料の直接発酵のために糖化酵素を遺伝子操作で発酵菌に入れるといった手法もあったように思います。
弊グループはテストプラントの数か月の運転までは行いましたが、初期の予想通り、大した成果も出ずに終了しました。
それからも何度も同じようなプロジェクトは続けられています。
ブラジルの燃料用アルコールは有名ですが、その製造プラント立ち上げの初期には会社の先輩が派遣されて指導していました。
このようなプロジェクトはあくまでも「石油の代替」という意味で行われたものであり、今のような「CO2削減」などと言う変な理屈は付けていませんでしたが、それでも「コストが合わない」というのがほとんどでした。
これは当然すぎるほど当然の事であり、ブラジルでは有り余るほどのサトウキビを燃料用に回してエタノール製造をしています。
アメリカではコーンを原料にやろうとしていますが、コーンは直接間接に人間の食料と競合しますのでそんなものが認められるはずもありません。
アルコール発酵に酵母を使う場合は、単糖類、二糖類しか分解できませんので、それ以上の多糖類、デンプンやセルロールその他を使おうとすればその糖化というのが不可欠です。
酒類の場合は日本では麹、ヨーロッパでは麦芽の酵素を使うことで糖化させてからアルコール発酵をするわけですが、コストが問題の燃料用アルコール発酵ではそこが難しいものです。
昨今は「二酸化炭素削減」と言えばコストは度外視といった変な風潮が広がっていますので、そこに「大化け」の可能性と言いたいのでしょうが、そんなものはいつまでも続くはずもありません。
やがてはあるべき姿に戻ることでしょう。