爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

エネルギーや温暖化の問題で人々が完全に勘違いしていること その2

その2は次の点についてです。

 

2.「運転中には二酸化炭素を出さない」だけを達成すればよいと思い込み、その装置を作るための鉄板一枚、ボルト一本を作るにもエネルギーを消費しており、そこには大量の二酸化炭素発生が隠れていることを忘れている。

 

これは以前から主張しているEPR(エネルギー収支)の厳密な計算ができていないということと同じです。

 

EPR(Energy Profit Ratio)すなわち、出力エネルギー/入力エネルギーで、そのエネルギー発生装置の製造や維持管理、廃棄に至るまでの入力エネルギーの総量に対し、生み出す出力エネルギーはどれほどかということを表す数値です。

 

こういったエネルギー問題に興味を覚えるようになった当初、風力発電装置や太陽光発電装置のEPRとしてもっともらしい数値があげられているのを不思議に感じ、その算出方法なども調べてみましたが、どうもはっきりしません。

その割に、製造メーカーや研究者たちからはかなり高いEPR値が出されていました。

どうやらそういった学界内部で流通しているような算出方法というものがあるようで、それに機械的に数字を入れ込むだけで出せるようです。

 

そういった数値紹介の際には一応はその装置の製造の最初から運転の維持管理、そして運転終了後の廃棄処分に至るまでの投入エネルギーを計算していると称されていました。

しかし本当にそのすべてが計算されているのか。

極めて怪しいというのが私の推測です。

 

それが最初に書いた文章、「ボルト一本、鉄板一枚作るためにもエネルギーを費やしている」ということであり、とてもそのすべてをきちんと算出してはいないと考えられます。

 

なぜ「きちんと算出していない」だろうと推測できるのか。

そういった原材料製造の担当者たちは「コスト計算」には非常にシビアな検討をしているのは間違いないのですが、「エネルギー計算」などはしているはずもないからです。

もちろん製造に関わるエネルギー源、電力や石油・石炭などの「値段」は詳細に計算しなければなりませんが、そのエネルギー値などは「知ったことではない」はずだからです。

それをしなければならないのはエネルギー問題の専門家たちですが、それをどこまで詳しく検討しているか、疑問です。

 

さらにほぼ「絶対に考慮していない」はずなのが、たとえば鉄鋼を作る際の原料の鉄鉱石などの採掘エネルギーです。

これは鉱山によって相当な差があるはずですが、これも採掘コストは重大な問題なので検討しても採掘エネルギーなどは考える必要もありません。

おそらく誰かが片手間に算出した値があって、それを皆が孫引き、ひ孫引きしているだけでしょう。

 

このように穴だらけだと考えられるのが、現在のEPR値ですが、そしてそれはいわゆる「二酸化炭素排出量」とも密接に関わります。

おそらくこれらの数値は実際よりはかなり良く(EPRは高めに、二酸化炭素排出量は少なめに)出されているはずです。

 

そのような数値の脚色を繰り返しているとどうなるか。

現在のように実際の原材料製造には安い石炭火力発電や石炭ボイラー蒸気などを使っていて、下流の装置の組み立て製造だけは「自然エネルギー発電電力」を使いましたでごまかしているのが、「本当に自然エネルギーだけ」になったときにとんでもない製造コスト増につながる危険性があります。

 

考えてみてください。

今でも「自然エネルギーだけ」で操業しているなどと称する企業もありますが、実際はそんなことができるわけもありません。

いまだにエネルギー賦課金をつけなければ価格競争力のないような太陽光発電風力発電だけとなった場合にそのエネルギー価格で工場を動かしたら光熱費がいくらになるか。

特にこのような自然エネルギーは電力となることがほとんどですが、蒸気などを作り出す熱源として使うには電力というのは非効率です。

現在では工場で使う蒸気などの熱源はほとんどが重油・石炭ボイラーであると思いますが、これをすべて電熱としたら相当なコストアップになるでしょう。

本当に化石燃料使用を排し、自然エネルギー電力だけですべての工場を運営するようになるとエネルギーに使うコストがとんでもない価格になるということです。

 

その危機感が本当にあるのでしょうか。

どうせ今の科学者・技術者たちは自分たちが生きている間は石油石炭などの化石燃料が無くなるはずもなく、裏ではそのような安価なエネルギーを使えると高をくくっているのでしょう。

 

今本当にやるべきことは、すべての産業でのエネルギー使用というものを正確に算出し、中でもエネルギー産出に直接かかわる発電装置などについては厳密な真のEPR値を計算することです。

どうせ「技術革新で数値は桁違いに改善される」などという言い訳が出てくるでしょうが、それはそれとして現状での値を出し、それでもその分野に金を投入すべきかどうかをはっきりさせるべきでしょう。

 

それをせずに今のようなエネルギー浪費を続けていれば、やがて必ずやってくる「エネルギー供給の不足」発生の時代がより早く訪れることになるでしょう。

そうなれば今のような電力やガソリンの価格高騰などという程度の問題ではなくなります。

それこそが本当の「人類の危機」でしょう。