鬼平犯科帳もようやく半分近くまで進みました。
今回も人情たっぷり、剣戟たっぷり。
「雨引きの文五郎」一人働きの盗賊文五郎を見かけた平蔵はわざと泳がせますが、盗賊間の争いが起きます。
「鯉肝のお里」鯉の肝臓というものはうっかりつぶしてしまうと苦味と悪臭が出てしまいます。そのようなものを異名に持つ女賊お里は元夫の父親長虫の松五郎と共に暮らしていますが、それを発見した火盗改は五郎蔵とおまさを監視役とします。その間に二人の関係が深まってしまいます。
「泥亀」元盗賊の泥亀の七蔵は茶店の主人に収まっていましたが、昔の知り合いの関沢の乙吉からかつてのお頭牛尾の太兵衛が亡くなり、その妻子が苦難を味わっているということを聞き、なんとかまとまった金を渡そうと苦心します。
「本門寺暮雪」平蔵の強敵は次々と現れますが、この話で出てきたのが最強の剣豪です。名前も明らかにせず「凄い奴」とだけ記されています。
平蔵の旧友で今は乞食坊主の井関録之助が、大坂に居た頃に一度だけ闇の稼業の者から殺しを頼まれたものの断ったことがありました。断ればよいというわけにはいかず、殺し屋が付きまとうようになり、江戸にまでやってきたのが「凄い奴」でした。
本門寺の茶店で平蔵が犬に菓子をやったりしていたところに、録之助を狙ってその凄い奴が襲い掛かります。平蔵は助けようとしますが、向かい合ってこれは今までで最強の剣客だと悟ります。
これはもうだめかと思った瞬間、茶店の犬が剣客の足に噛みつき、その隙をとらえて何とか平蔵は切り伏せることができました。
「浅草・鳥越橋」数々の陰惨な話が出てきますが、これもその最たるものかもしれません。
盗賊傘山の瀬兵衛の配下、風穴の仁助は一味の引き込み役として蠟燭問屋の下男として入り込んでいましたが、その連絡係の押切の定七から、仁助の女房のおひろが頭の瀬兵衛に寝取られたと言われ、裏切りを持ち掛けられます。
実はおひろと同居の老人の二人とも定七が殺し、土に埋めたうえでうその話を持ち掛け、別の盗賊にこの盗みの仕掛けごと売り渡そうとしたのでした。
ところがその定七の裏切りの相手との話をしたのが小房の粂八の店の中で、それを聞いた粂八からの連絡を受けた平蔵は内偵を進めます。
「白い粉」平蔵を付け狙うのは大盗賊だけではありません。手下が20名ほどという中程度の盗賊もやはり何とか平蔵を亡き者にしようとしていました。
霰の小助という盗賊が平蔵暗殺として仕掛けたのが、火盗改役宅の料理人の勘助に毒薬を使わせるというものでした。
勘助の女房おたみを拉致し、それを種に勘助をゆすり、毒薬を平蔵の料理に混入させました。
しかしその少し前から勘助の作る料理の異常に気付いていた平蔵はその身辺の捜査を続け、盗賊一味のことも掴んでおり、一網打尽としました。
「狐雨」火盗改同心の青木助五郎は盗賊を一人で捕らえるという殊勲を何度も行っていましたが、金遣いが荒いなど不審な点をいくつも指摘されていました。
しかしある時気が狂ったかのような言動を始めます。狐憑きというもので、助五郎の父親が殺害した天日狐が取りついたというものです。
助五郎が盗賊と通じていることも自ら話だします。
それで実際にその盗賊たちもお縄にすることはできます。
狐雨など、ちょっと変わった雰囲気の話でした。