爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「鬼平犯科帳(六)」池波正太郎著

第六巻ではこれまでの網切りの甚五郎、高津玄丹といった大物との死闘はなく、小品ばかりといったイメージですが、それでも一つ一つになかなか味があるといった感覚です。

 

礼金二百両」与力佐嶋忠介の叔父、谷善左衛門が仕える大身の旗本横田家の内紛を平蔵は周到に収め、礼金として二百両を貰うという話です。

「猫じゃらしの女」密偵伊三次の登場。なじみの娼婦およねの客が盗賊に蔵の鍵の蝋型を売ることを商売としていたのですが、それが平蔵に渡り。

「剣客」平蔵の配下沢田小平次の剣の師、松尾喜兵衛がかつて打ち破った相手に襲われ殺される。その相手は現在は盗賊一味であり、それを伝手に一網打尽とする。

「狐火」密偵おまさがかつて一味であった狐火の勇五郎は先代が亡くなった後息子が継いだものの、腹違いの弟が別れて兇盗となります。息子の又太郎は弟の所業を許せず討ち果たします。

「大川の隠居」かつての盗賊友五郎は今は船宿で船頭となっています。平蔵の評判が良すぎるためにいたずら心で屋敷に忍び込み印籠と煙管を盗み出します。

「盗賊人相書」蕎麦屋を盗賊が襲い、主人や奉公人一同を皆殺しにしますが、一人だけ少女が助かります。その娘から盗賊の風体を聞き取り似顔絵を描いたのが初めて依頼された絵師石田竹仙、言われたとおりに描いていったのですが、それで出来上がったのが昔竹仙と付き合いのあった盗賊熊治郎、竹仙は絵は火盗改に渡したものの、熊治郎を探して江戸を離れるように頼みますが、殺されかかったところに火盗改めが打ち込みます。

「のっそり医者」前作で似顔絵を描く手伝いをした少女およしを医者萩原宗順の下女として紹介したのですが、宗順は実は元は武士、同僚を切ってしまい仇として付け狙われる身でした。仇打ちの相手に発見されますが、その相手は今では盗賊の一味、宗順を助ける一方で盗賊一味を捕らえます。

 

一人一人の人生が丁寧に描かれているものと感じます。