このところ繰り返し見ている夢が「会社でマーケティングについて調査し発表する」というものです。
これもどうも書きづらい話で、単に夢だからと適当に書くのもまだ気が引ける(もう退社後10年以上経っていますが)ということもあります。
そんなわけで、まあそれほど詳しいわけではないのですが、在職時代に聞きかじったことなど書いておこうかと思います。
酒類業界のマーケティングなどといっても、とてもひとまとめにできるようなものではありません。
ビール業界などは詳細なマーケティングリサーチをしてそれに基づく戦略を立て動いているのでしょうが、私の居たような焼酎や清酒などが主の業界では全く異なるやり方がありました。
(ただし、清酒でも大手のところはまた別かもしれませんがよく知りません)
酒類業界は一般消費者がターゲットであるはずであり、ビールやサワーといったものはテレビCMを主に消費者に印象付けるといった方策が主となります。
ところが焼酎や清酒といったものは全く別の売り方があります。(もちろん消費者向けの働きかけもありますが)
それが、卸売り、小売り、飲食店(業務店といいます)向けのセールス活動です。
ビール業界などもこれと決して無縁ではなく、飲食店がアサヒ一色、キリン一色といった状態になっていることもよく目にします。
それが非常に強いのが清酒・焼酎でした。
これがどういうことなのか、飲食店で酒を飲むことがある人にはおなじみでしょうが、今は「全国各地の地酒」を売り物にするという飲み屋もありますが、かつては、そして今でもほとんどの店では「お酒」と注文すると「冷か燗か」と聞かれることはあっても、その品種を問われることはほとんど無く、店指定の酒が出てくるというのが一般的でした。
そのため、飲食店に置いてもらえるかどうかというのがほとんど酒の売れ行きを決めるということになります。
当然ながら、メーカーの営業活動も消費者に直接働きかけるよりは飲食店、小売店などに日参し、彼らの求めるように取り計らうということが主流になります。
私のいた会社でも営業社員というのはある程度の数がいましたが、彼らの仕事というのも卸、小売り、業務店回りというのがほとんどだったようです。
私も若い頃はそのような営業形態というものに疑問を持ち、もっとテレビCMをジャンジャンやればと思ったものでした。
(なお、私は入社以来ずっと製造、研究職であり、営業などはほとんど関与していません)
もちろん、そんな技術者の思いなどは関係なく会社の営業は進んでいきました。
しかし、面白いものでそのような旧態依然たる営業スタイルの会社が前代未聞の取り組みをしたことがあります。
海外のリキュール原酒というものも取り扱っていたのですが、それを炭酸割りして缶に詰めて売るということをおそらく国内でも他社に先駆けて行いました。
それにあたり、素人同然の会社ながらテレビCMを次々と流すということをしたのです。
当時そこそこの人気を集めていた女優Yを使ったCMは、ある程度の年齢の人なら覚えがあるかもしれません。
その缶入りフィズは会社としては経験のない売れ行きとなり、大騒ぎとなりました。
ところがお粗末なのがその後処理で、通常の会社ならそのCMの費用などはすべてその製品のコストに含めて計算して実施したはずですが、素人会社の悲しさ、そのような会計処理の手法を知らずにCM費用は予備費のようなところから出すということをしてしまいました。
そのため、その製品は売り上げが上がったものの放送局への支払いが巨額なものとなり、何年もかけて払ったそうです。
そのようなボロ会社ですが、私が退職する少し前に超大型酒類企業K社によって買収され子会社となりました。
K社は酒類だけでなく多くの方面に手を伸ばしていますが、その体質は完全にビール会社そのものです。
その指示で弊社(文字通りのボロ会社)の焼酎の売り方も完全に変えられました。
業務店や小売店回りの営業社員などというものも削減されました。
しかしどうやら全く上手くいかなかったようです。
ここから先の話はもう私の退職以降になりますので、本当のところは分かりませんが。
酒類の消費形態というものが昔と今ではかなり変わっているのでしょうか。
業務店(飲食店)というものの経営も厳しくなり、また家吞みという言葉が普通になるほど家庭での酒類消費が増えているということもあるのでしょう。
そのような状況であっても、消費者に直接働きかけるということは難しいのかもしれません。
テレビCMを集中してもなかなかその効果は表れないのかも。
しかし消費者の意向を探るマーケティングリサーチというものは必ず必要であると思います。
まあほとんど空振りになるのでしょうが、どのような酒を飲みたいのか、適切に調査すれば何らかの答えに近づけるのではとも夢想します。