爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

エチルアルコール(エタノール)「消毒用」と「酒類」の違いとは(2)

醸造用アルコール

さて、それでは連続蒸留装置によって作られる「アルコール」についてです。

これを「醸造用アルコール」とか「飲料用アルコール」などと言います。

なぜかと言えば、このアルコールの用途から来ています。

 

酒類の蒸留は、元はヨーロッパで言えばウイスキーやブランデー、日本では焼酎として飲むために行われましたが、これらは「単式蒸留装置」つまり一回だけ蒸留をすることにより作られました。

しかし、より純粋なエチルアルコールだけを取りたいという目的のために、工夫されてできたのが連続式蒸留装置です。

 

これで作られたアルコール液はあまりにも純度が高いために、酒としての香気(つまり”不純物”の香り)が無いために、それだけではあまり使われませんでした。

ヨーロッパでは、モルトウイスキーブレンドして香味を和らげるために使われました。

また、ウォッカではそのまま飲まれることもあったようです。

日本でもそのまま水で割り「甲類焼酎」として飲まれることになりました。

 

しかし、もう一つ日本では重要な用途ができました。

 

太平洋戦争の前に米が不足してきたときに、清酒を作る米も足らなくなりました。

それを補うために発酵して作られた清酒の原酒に、アルコールなどを混ぜて作ることになりました。

そのために連続蒸留で作られたアルコールが使われることになります。

そのために「醸造用アルコール」と呼ばれることになりました。

これは、戦争が終わった後もずっと続けられ、アルコールの用途の大きな部分を占めることとなりました。

 

なお、最近では清酒の需要も減少し、さらに米だけの純米酒がブームとなったこともあり、清酒醸造用のアルコールは供給が減りました。

しかし、今はチューハイやカクテル類、さらに第3のビールなどの原料に使われることになりました。

 

こういったアルコールを製造してきたのが、いわゆる「アルコール業界」、私が勤めていたS社の他に、かつてはK社、T社、G社などがありました。

 

私が会社に入った昭和50年代はまだ日本酒メーカーが大きな力を持っていた時代でした。

そこにアルコールを売り込む当社などは相手の言うことをなんでも聞かなければ納入できないような状況でした。

アルコールには不純物などは最小限にしなければならず、メタノールは10ppm以下とか(数値は覚えていませんが)厳しく指摘されたものです。

「どうせ清酒に入れるんだからそんなに厳しくしても仕方ないだろう」と感じてはいましたが、お得意さんにそんなことを言えるはずもありませんでした。

特に灘のO社などはその基準が厳しかったのですが、当時の最新鋭分析装置の液クロを向こうが導入したときは、こちらはまだガスクロだけで分析していたのに相手が不純物があると言ってくるのでその対応のために慌てて同じく液クロ(液体クロマトグラフィー分析装置)を買って分析を始めなければなりませんでした。

 

どうも、はじめの「なぜ酒類エチルアルコールは不純物がほとんどないか」を説明するはずだったのが、あちこちに話が飛んでしまいますが、このあたりの話題になると昔の想いや愚痴、恨みつらみがどんどんと湧き出してきて止まらなくなります。

ご容赦ください。

 

★きれいなエチルアルコールの製法

さて、そこまで「きれいな」エチルアルコール水溶液をどうやって作っていたか。

ようやく話が主題に戻ってきました。

実は前に「連続蒸留装置だから純粋エチルアルコールが作れる」と書きましたが、これは正確ではありません。

多段式連続蒸留装置を1本だけ使った蒸留では、それほどきれいなものはできず、かなりの不純物(エタノールと沸点が近い物質)を含んでしまいます。

 

それを除くためには「精留」という操作をすることになります。

またもかなり話が長くなりましたので、以下はまた別の機会に書きます。

(読者が居てもいなくても続く)