爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「作家で億は稼げません」吉田親司著

書名はこうありますが、もちろん「億稼いでいる」作家も数名はいるようです。

しかしそれ以外の作家と呼ばれる人たちには「億」ははるか彼方の金額のようです。

 

著者の吉田さんはお名前もまったく知りませんでしたが、「架空戦記物」というジャンルで長く作品を発表し続けている「専業作家」で他の職業は兼務せずにやっているということです。

いわゆる作家と言われる人たちでも本業は別にあるという人が最近は多いようで、デビューする作家に出版社が「仕事は辞めないように」とアドバイスしているとか。

つまり本を出版できるほどの作家でもそれで生計を維持していくということが難しくなっているということです。

 

実はこういった本を書いた動機というのが、少し前に「小説家になって億を稼ごう」という本を出版した作家がいたということで、それを読んでこんな本を信じて身を誤る小説家志望の人がいては困ると感じ、自らの経験を伝えようということだったようです。

著者はすでに20年近く作家専業ですが、その間の年収は最高でも1000万円弱、ひどい時は190万円だったということです。

それでも多くの小説家志望者が出版社の使い捨てのようになって消えていく現状は見ていられず、できるだけ最良のやり方で作家となってもらいたいという思いです。

 

作家としてデビューするにはいくつかの策がありますが、もっとも良いのが多くの出版社が行っている新人賞に応募して優勝することだそうです。

こうなればその賞金を貰えてその出版社から本が出せるだけでなく、その後数作は本を出せることが間違いないようです。

その次がネットにいくつかある「小説になろう」といったサイトで優勝して出版社に目を付けられることですが、これは出版社側から見えればそれほど重要視はされないようです。

もっと悪いのが出版社への原稿持ち込みでまずまともには読んでもらえません。

新人賞を貰うというのはかなりハードルが高いようですが、結局は後がやりやすいようです。

 

また、一冊でも出版に至ったらその本を自分で購入してでも別の出版社あてに「献本」するのが有効なようです。

持ち込み原稿などは無視する編集者でも、本になったものは見てくれるようです。

それで可能性があると見れば相手から接触ということもあるとか。

 

その他、原稿執筆にはまだ一太郎が最良だとか、パソコンは最低でも2台持ち、さらに定期的バックアップも数種の媒体に行うとか、色々な助言も書かれています。

 

最近の小説家志望者に対する苦言ですが、他の本は読まないという人が増えているようです。

少なくとも同じジャンルの本くらいは目を通さなければ自分の書いているものが独自のものか、盗作と間違えられないかといったことすら分かりません。

もちろん他の本を読んでそれを真似するということではなく、それに書かれていないことを探すという意味でもやはり幅広く読書するということが必要だということです。

 

著者の得意分野であった「架空戦記」というジャンルもかなり以前から「もう終わり」だと言われていたようですが、それでも何とか続いていたのが、コロナ禍でトドメを刺されたようです。

他の分野へ手を伸ばす対策を立てているとのことですが、どうなりますやら。