著者の宮崎さんはイギリスの大学の大学院に留学、帰国してからは翻訳で身を立てようと活動し、一時はかなり訳書が売れて翻訳料も入ってきたそうです。
しかし、本書に記されているような出版社の横暴に法廷闘争も辞さずに戦い、そして疲れて翻訳を辞めることとなりました。
まあ本人の書いていることですので、相手方にも言い分はあるのかもしれませんが、真実半分としても出版社側のやり方はかなりひどいもののようです。
やはり翻訳というものを軽んじているという面もあるのでしょうか。
出版社側の言い分のひどい例をいくつか。
原作者の了解も取らないまま、訳者に適当にカットし編集しろという。
約束した印税を一方的に安くする。
何の連絡もないままいきなり出版中止、文句を言うと出版契約はしていないと言い張る。
訳者の名を表示せずに出版。
最後に翻訳家志望者に対してアドバイスがあります。
翻訳の印税に依存しなくてもすむ経済状態を確保すること。
信頼できる出版社かどうか見極める。
好条件に惑わされない。
仕事に取り掛かる前に出版が中止になりそうな内容の本でないことを確かめる。
そして何より「出版契約書を求める」ことだそうです。
他にも進捗状況をこまめに報告し不安な点があれば相談する。
締め切りを厳守する。
本人訴訟ができる程度の法的知識を身に着ける。
もう、こうなるとほとんどの人が無理のようです。
出版社の方も出版不況が激しく、しかも翻訳書の売り上げは見通せない場合が多いとかで厳しい事情はありそうですが、やはりこういった業界には近づかない方が無難と感じます。
おそらくこの著者以外の翻訳家たちも経験していることなのでしょう。