フリーランス、すなわち自由業という人たちの話ですが、そもそも自由業とは何か。
辞書で調べると、「時間や雇用契約にしばられない職業、弁護士や著述業など」とあるそうです。
しかし、「弁護士」と「著述業」では相当な差がありそうです。
この本では、著者の竹熊さんも属する「著述業」を中心とした「表現業者」のみを扱うということです。
文章家以外にも絵画、マンガ、音楽、映画関係の表現全般、こういった業界もほぼ同様の状況にあると言えます。
こういった業界は「会社員とフリーランス」でできています。
出版社の編集者は会社員ですが、作家やフリーライターはフリーランスです。
作品を生み出すのはあくまでもフリーランスの方なのですが、それを金になる商品にかえるのは会社員たちです。
作家やフリーライターには「誰でも」なれます。
世に「作家になりたい」という人々は無数にいますが、その中でたまたま出版社の目に留まった人が作家になることになります。
しかし、たいていの作家は若いうちにその道に進むのですが、なぜか40歳を境にして仕事が減り、生活にも行き詰る人が多いようです。
ただし、中には会社員を続けながら作家もという人もいますが、そういう人には社会常識も備わっており、この本で扱うフリーランスと言う人々とはかなり違うので心配無用です。
本書はまず著者の経歴について書いていきます。
著者の竹熊さんは本当は漫画家になりたかったのですが、その才能はないことが早い時期に納得できたため、次善の道としてマンガやゲームなどに関する文章を書くライターとなりました。
ちょうどバブル前後で様々な出版物も溢れるように出ていた時期で仕事を得るのも簡単だったようです。
それであちこちの出版社に知り合いを作っているうちに、色々な仕事をすることができ、まずまずの売れ行きとなったものもありました。
しかし40歳を過ぎたあたりから頼まれる仕事が徐々に減っていったそうです。
それは竹熊さんの性格で「マンネリを極端に嫌う」ということもあったのですが、それ以上に多くの作家に共通の問題として、「出版社の担当者が皆年下になる」ということがありそうです。
編集者たちも本を売れるようにしたいため、あれこれと作家に指示をするのですが、それが年上の作家には話しにくいという理由がありそうです。
竹熊さんはそれでどんどんと仕事が減り収入も少なくなり、就職しようとしても上手く行かず大変なところで脳梗塞で倒れたりとひどい状況に追い込まれます。
借金もかなり抱えていたのですが、この脳梗塞で昔母親が掛けていた保険金がおりたため、それで借金も返済できたという奇跡的な幸運も持っていました。
その後の章では著者の知人で同様にフリーランスでやってきた人たちの実例を紹介していますが、それぞれ少しずつ状況が異なるようです。
現在はネットメディアが隆盛となり、ユーチューバーなどと言う職業とも言えないものが人気を集めていますが、こういったものも同様でしょう。
長い人生を考えた場合中年以降のことも考えなければならないのでしょうが、今はまだそこまでは行かないようです。
仕事があり家もあればフリーランスと言えますが、ひとたび仕事が来なくなればすぐにでもホームレスになってしまいます。
吾妻ひでおという漫画家は1980年代には売れっ子だったのですがその後行き詰り本当にホームレス生活をしたそうです。
今は再び社会復帰し漫画家としてホームレス時代の思い出を作品にしたりしているそうですが。
なかなか厳しい社会のようです。