爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「翻訳家になるための7つのステップ」寺田真理子著

翻訳家となるためには、外国語に堪能であることは最低限必要でしょうが、それですぐになれるというものではないようです。

 

著者の寺田さんも、英語とスペイン語に通じてはいたものの、出版関係には何のつながりもなかったのですが、一念発起して出版翻訳に挑戦してやろうと思い立ち、いろいろな手段を取りながらようやく翻訳本の出版にこぎつけました。

 

世の中には外国語に堪能である人はかなりたくさん居るようですが、こういった人たちが出版翻訳を目指そうとしても、何をどうすれば良いのか分からないことが多いようです。

そういった人たちのために、「語学力を身につける」以外の「翻訳業に参入する方法」を解説しています。

 

外国語を日本語に変える技術を使って行う職業は、出版翻訳以外にも映像翻訳、産業翻訳、通訳などいろいろあるようです。

それぞれは、似たようで違うところも多いのですが、出版翻訳という業種にはあくまでも出版社との関係というところが大きく関わっているようです。

 

本書の前半は「翻訳家になるための7つのステップ」となっており、その多くは出版業界という分野の中でどのように認められていくかということが主眼となるようです。

 

翻訳といってもかなり広い範囲の話ですので、「分野を絞る」というのが最初に掲げられています。

著者の寺田さんは最初の翻訳本として「認知症ケア」の本を選びましたが、やはりその領域について非常に興味を持っていたということがあるようです。

日本で多くの読者を獲得できるかどうかも大切な観点ですが、何より自分の興味の持てる分野でなければ上手く行かないようです。

その分野で翻訳者として認められて行けば、その後の同じような領域の本の翻訳を依頼されるということもあるかもしれません。

 

その他、良い原書を見つけてそれに合った出版社を選び、企画書を作って出版社にプレゼンをしていくと言った手順が続きます。

本当に翻訳家デビューを考えている人にとっては非常に参考となるでしょう。

 

本のあちこちには「コラム」として著者が気付いたことが書かれています。

「まじめの罠」という文章も面白いものでした。

文芸翻訳を志す人は「真面目なタイプ」が多いと言われているそうです。

まじめでなければ、こんな辛気臭い商売はやっていられないと続けられていますが、まあそうでしょう。

しかし、まじめさが高じると「悲壮」になりかねません。

それで視野狭窄になるというのが「まじめの罠」だということです。

視野を広く、編集者と知り合う機会にも「自分をいかに売り込むか」だけに囚われるのではなく、「この編集者はどんな人と仕事をしたいのか」と考えられるようになれば仕事も向こうからやってくるというものでしょう。

 

本書後半は著者の知人たちのインタビュー。

翻訳家や出版社の編集者など、いろいろな関係者の話が載せられています。

ここもその志望がある人にとってはためになる話がいろいろとあるのでしょう。

 

翻訳どころか英語の文章をちょっと読むのもやっとの自分にとっては雲の上の話のようですが、なかなか興味深いところが各所にありました。

 

翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと

翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと

  • 作者:寺田真理子
  • 発売日: 2020/06/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)