爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「馬上の星 小説・馬援伝」宮城谷昌光著

小説はほとんど読まない私ですが、SFと宮城谷さんの歴史小説だけは読みます。

この本は宮城谷さんの中国古代歴史小説の最新のもののようです。

 

馬援という名を聞いてもほとんど分かりませんが、時代は前漢が王莽によって滅ぼされ新という王朝になるも、すぐに滅んで劉秀が漢王朝を再興し光武帝となる頃の人です。

馬援はさほど早くから劉秀の下についたわけではなく、劉秀が帝位を称えた後に招かれる形で迎えられ、その後は多くの戦いに活躍したようです。

 

馬援が生まれたのは長安からも近い茂陵というところですが、四男ということであまり期待もされず持て余されたため家を出て西方に向かったようです。

その先は馬や羊などを飼う牧畜が主のところで、そこで実力を発揮しました。

ただし牧畜で成功してもその成果を皆周囲に分けてまた別の地へ向かうといったことで、徐々に声望を高めていきます。

 

王莽が各地の反乱に手を焼き、その対策に馬援も招かれ高位を授かりますが、その時には任地もすでに反乱軍の手の中となり逃亡せざるを得なくなります。

そこからさらに各地の実力者の間を渡り歩き、最後には劉秀のもとに行くことになるのですが、それはまあ良いでしょう。

 

馬援が残した言葉というのが一つありました。

当今の世、独り君、臣を択ぶのみにあらず。臣もまた、君を択ぶ。

光武帝に最初に謁見した時に述べたそうです。

君主が臣下を選ぶだけでなく、臣下も君主を選ぶのだと、大乱世にあっての真実でしょう。