爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「新聞記者」望月衣塑子著

望月さんは菅官房長官の記者会見で何度も食い下がる質問をしたことで知られるようになった新聞記者ですが、他にも多くの取材に関わっています。

 

そんな望月さんが子どもの頃からの想いから始まり、記者生活のあれこれに至るまで半生の自伝のように書かれた本です。

 

官房長官記者会見での質問についての事は最後の部分に書かれていますが、当時の菅長官の木で鼻をくくったような意味のない回答と、それに対して何の抵抗もせずにただ発表だけを記事にしている記者クラブの連中の薄気味悪い状況については、他の本でも書かれていることですが、本人の筆でありありと描写されています。

 

望月さんは記者をしていた父上とアマチュアながら劇団で演劇をしていた母上の間に生まれ、子どもの頃はお母様の影響で俳優になりたいと思っていたそうです。

しかし大きくなるについて、お父様の生き方に魅せられ新聞記者を目指すこととなりました。

 

就職活動では新聞各社を受験するも、なかなか合格はせずようやくブロック紙東京新聞に合格します。

千葉支局に配属となり様々な事件などの取材をしながら記者として成長していくこととなります。

多くの失敗もあり後悔を重ねながらもよりよい記事を書ける記者となることを誓う有様がつづられています。

 

そこから横浜支局、埼玉支局、東京本社社会部と経験を積んでいく中で、日歯連汚職事件や森友問題、加計問題など世間を騒がせた大事件の取材を、結婚から出産育児などと並行しながら進めていきます。

 

そのような経験の中、記者間のつながりを通して読売新聞には好意をもち一時はそちらへの転職を考えるほどだったのですが、モリカケ問題さなかに前川喜平さんについての怪記事を読売新聞が掲載したことで一気にその気持ちは引っくり返ってしまいます。

政権に都合の悪い前川さんを貶めようとして怪情報を読売に流し、それをそのまま記事としたものです。

望月さんはその後前川さんへのインタビューを行い、その人格への疑問は解消しそれを貶めようとした政権や読売新聞への疑問がさらに拡大していきます。

 

そして政権のうさん臭さ、それと談合しているかのような記者クラブの在り方に疑問を持ち、官邸での総理・官房長官記者会見への出席を望むようになり、社会部からという異例のことではあるもののそれを実現できるようになります。

 

衝撃を受けたのはTBS記者の山口に強姦されたと告発したものの政権中枢の横やりで不起訴とされてしまった、詩織さんについてでした。

これも官房長官に質問を繰り返すこととなりますが、もちろんまともな回答は何一つありませんでした。

 

記者会見での活躍?が目立つようになるにつれ、反発や批判、そして脅迫めいたメールなどが相次ぐことになります。

しかしそれでひるむ望月さんではないようです。

このような状況ですが、わずかながら味方も増えてきているようです。

さらなる活躍を期待したいものです。