新聞やテレビなどのメディアが政権と癒着し、健全なジャーナリズム精神を失っているのではないかと言われます。
本書著者の南さんは、新聞社で政治部記者として勤めた後に新聞労連に出向し中央執行委員長をを務めました。
そのためか、政治部というものの実態もその問題点もよく分かっているようです。
首相はじめ政権幹部の記者会見は、最近では「台本営発表」と揶揄されています。
つまり、質問はあらかじめ記者側から提出されており、それに応じて作られた回答をプロンプターで読むだけといったものになっています。
それに対して疑問を持ちさらに質問を重ねようとすると、一人一回にしろとか、もう時間がないなどとして断るということが特に安倍政権になってから激増し、あたかもその姿勢が当然かのように振る舞うようになってしまいました。
そしてその場に居合わせることができるのも、記者クラブに所属する各社一人の記者だけといった制限がかけられ、フリーやネットメディアの記者などは参加することもできなくなっています。
こういった状況は政権側だけで作られたものではなく、各社の政治部と言われる組織もそれに加担していると考えられています。
そのトップが政権側と定期的に会食するなど癒着ぶりも知られているところです。
彼らにしてみれば、政権側と意見交換の場を多く持ち、ツーカーの間になっておけば政権の考えも伝わりやすいということなのでしょうが、実際には政権の言いたい事だけを垂れ流す道具として使われているだけです。
そこにはメディア側の体質、女性や異端者は排斥していくといったものも深く関わっています。
著者は元政治部記者だったということで、批判をするのは身を切る思いということですが、それでもこういった状態に安住しているわけにはいかないでしょう。
選挙報道などでも政権側の押しつけは厳しくなる一方でした。
どこかで押し戻す心意気がなければ既成メディアなどは存在意義がなくなるのでしょう。