爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

経済対策に39兆円、補正予算だけでも29兆円という、国を崩そうということをやるのか。

物価急上昇、円安、コロナ禍からの回復といった難題山積みの日本経済ですが、支持率急降下の岸田政権はそれをどうにかしようというのか、巨額の補正予算で経済対策をやるという暴挙を発表しました。

https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2022-2/20221028_taisaku_gaiyo.pdf

 

何が「暴挙」か、これでもまだまだ足りない、といった感覚の人も多いのでしょうが、メディアもさすがにこれには数々の批判の声を上げているようです。

 

多くの問題点がありますが、大きなものや他の人があまり言わないことなどを並べてみましょう。

 

1,そのほとんどを国債発行で賄おうとする愚かさ

2,物価上昇を補助金支給で何とかしようという愚かさ

3,コロナ対策でまた観光や外食に補助金バラマキしかないという愚かさ

4,エネルギー価格急騰は戦争の影響であり、終わればまた下がると思い補助金補填で誤魔化そうという愚かさ

他にも数々ありそうですが、とりあえずこんなところで。

 

1,そのほとんどを国債発行で賄おうとする愚かさ

 一般予算が年間110兆円、その内国債費が24兆ですから、正味?86兆円ほどです。

その半分にも迫ろうという39兆円ですから、財源は国債しかないでしょう。

非常時だからしょうがないということでしょうが、そう言うならこれまで数十年間ずっと非常時だったのでしょうか。

とにかくすでに国債だけでも千兆円を越えもはや完全に償還することなどは全く不可能です。

他国では国の債務が増すと財政破綻となるのに日本は大丈夫だといった迷信が生まれているようですが、いつまでも大丈夫のはずもないでしょう。

ちょっとバケツの容量が大きくて、日本の場合はドラム缶程度の大きさだったのかもしれませんが、それでもやはりいつかは溢れる時が来ます。

そうなっても「破産するのは政府で国民ではない」などと言う人もいますが、政府の支出に頼っている人は大きな影響を受けるのは間違いありません。

公務員、年金生活者、医療関係者、公共工事関係者、デンツーなどは大幅な収入減とならざるをえないでしょう。

その時を早めようというのでしょうか。

 

2,物価上昇を補助金支給で何とかしようという愚かさ

現在の物価上昇は主に輸入品の高騰によるもので、国内の労働者賃金の上昇によるものではないので「悪い」物価上昇である、(だから金利引き上げは行わない)というのが日銀の姿勢です。

実際に特に上昇しているのは、石油製品や天然ガスなどのエネルギー資源、そしてそれが特に影響する電力料金、ガス料金といったもの。

これはロシア産エネルギー資源の禁輸措置が関係していると見られる。

ウクライナ紛争により打撃を受けている小麦を中心に穀物価格、植物油価格、そしてそれに影響を受けた食糧。

このようなエネルギー・食糧資源の価格急騰はあくまでも戦争によるものであり、この問題が解決すればまた元のような価格に戻るという期待があるのでしょう。

そのため、現在の価格は一時的なものであり、ここさえ乗り切りロシアがあきらめて終戦となれば元通りになるという期待なのでしょう。

 

しかし戦争は長期化しロシア劣勢と言われながらもロシアのウクライナ領の占領状態はまだ続いており、とても早期に解決とはなりそうもありません。

そのような状況において、「補助金を支給してでも経済活性化をはかる」べきなのでしょうか。

ロシアの戦争は拡大するかもしれません。

今は経済が停滞したとしても「じっと我慢」する時なのでは。

もしもロシアの矛先が極東に向けば。

そうなれば嫌でも日本も軍備増強に向かわねばならず、そうなればその財源も多量に必要でしょう。

もしかしたら日本も「非常時に備え節約・耐乏生活を行なう」べきなのでは。

まあ、これは少し極端な予測かもしれませんが。

しかし、「補助金支給で経済規模維持」ということが許される状況かどうかも怪しいものでしょう。

 

さらに、この「経済対策に補助金支給」というのは実効性、公平性の観点で疑問があります。

ガソリン高騰では石油輸入各社に補助金支給でガソリン市販価格を抑えるという方策が取られ、一部の野党や専門家が主張したガソリン税の停止といった措置は無視されました。

今のところ、ガソリン価格は予定通りの水準にあり、補助金受領の会社が自らの懐に入れて価格反映させないという危惧は現実化していないようです。

しかし、すべての業界がこのような態度をとるわけではないでしょう。

電力業界もおそらくは大丈夫でしょうが、中には怪しいところもあるのでは。

まあそれでも手数料と称して国費を大量に掠め取った業界よりはマシでしょうが。

 

3,コロナ対策でまた観光や外食に補助金バラマキしかないという愚かさ

私自身がコロナ感染してしまい、当分は旅行どころか外出もできないという状況なので、非常に忌々しいのですが、各地の観光が復活の兆しということで「良いニュース」かのような扱いでテレビ報道をにぎわせています。

またあの宿泊補助やクーポン券などといったものを目当てに旅行に出ようという人間が続々と出てきていますし、海外からの旅行者も順調に増加しているようです。

一部ではGOTOイートも再開とか、外食産業も期待をしています。

 

コロナ流行初期に急激に業績悪化し存続の危機となった観光業界、飲食業を支援という意味で始まった頃には大きな意味があったようなこれらの事業ですが、今になったらどうでしょう。

こんなものが無くても誰もが外に出たがり、飲みたがり食べたがりしているのでは。

そういった欲は人に比べて薄いと思う自分自身でもはやり「たまには外で」と思ってしまいます。

もう貴重な国費はこんなところに使うのではなく、もっと有効な、そしてなかなか使えない所に集中させるべきでしょう。

以前に意味があったことでも状況が変われば違うということ、その感覚が特に無いのが官僚、そしてその操り人形の議員たちでしょう。

 

4,エネルギー価格急騰は戦争の影響であり、終わればまた下がると思い補助金補填で誤魔化そうという愚かさ

 

実はこれが私の考えでは一番重要性があることなのですが。

 

ロシアのウクライナ侵攻に対しての欧米のロシア制裁で、ロシア産原油天然ガスの禁輸に向かうこととされたために石油や天然ガス価格が急騰しました。

これはコロナ禍で減少したエネルギー需要が回復しつつあった情勢と相俟って価格の上がり方も激しくなりました。

そのため、日本政府もガソリン価格抑制のために補助金支出を決め実施中、今のところ終了できる見通しはありません。

石油ばかりでなく天然ガス価格も上昇し、それに頼る比率の高い電力料金も上がり続け、そのため電力料金引き下げのための補助金支給も始めることとなりました。

 

このようなエネルギー料金は「上がれば金を出して下げさせる」ことで良いのか。

 

戦争によって始まった価格高騰は戦争が終われば下がるだろうから、それまでの我慢。

というのがその行動の裏の思想でしょうが、そうは上手く行きません。

 

エネルギー価格が安かった昔、石油などまた油田を掘ればいくらでも出てきた昔。

そのような時代であれば、戦争の影響で少しくらい供給量が減っても別の産地から増産すれば何の影響もでなかったでしょう。

それができなくなったのは、実は「エネルギー供給量の限界」が見えているからです。

世界的にはごく一部の供給不安であっても世界全体がそれを注視しなければならない。

そのような供給事情にあるからです。

 

別に「気候変動対策」など無くてももうエネルギーの使い放題という時代ではありません。

今でもエネルギー転換とか、省エネといったことが言われていますが、本当にすべきことは「脱エネルギー」です。

とはいえ、人間はエネルギー(降り注ぐ太陽エネルギー以外の)を使用せずには生きていくこともできませんので、完全な「脱エネルギー」は不可能ですが、それでも徐々にエネルギーに依存する文明からの脱却をしていかなければならないと思います。

 

そのためにはこういった機会は逃さず、これを機にエネルギーを使わない体制にできるだけ移行していくことが必要であり、そのためには補助金どころかエネルギー大量使用には追加課税をするといった対策をすべきでしょう。

それで特に生活に影響が出るような人には個別に対策をすべきであり、今回のような補助金バラマキのエネルギー対策などは全く逆効果です。

 

他にも多くの問題点はありますが、それでもこの方向に進むのでしょう。

特に国債の大量発行というのは現在の若者や子供、これから生まれてくる未来の日本人に多くの苦難を押し付けることなのですが、このような施策がされようとしているのに若年層の政権支持率が高いというのはまったく理解できません。

思考力も想像力も捨て、「何となく何かやりそうだからアベさん支持」という割合が高いということですから、当然のことなのですが、もうすぐ死にそうな老人よりははるかに長い時間、こういった愚挙の後始末をしなければならないのが現在の若者たちです。

もう少し、頭を使ってください。