近年自然災害が頻発し、多大な被害が出ていますが、それは気候変動により降雨量が多くなったという理由ばかりでなく、どうやら人口が増え産業が活発になったために「昔は使われていなかった場所」に住宅や工場などを建てるようになったということも大きな要因となっているようです。
日本の人口は2008年以降減少し始めていますが、震災想定区域とされている域内の居住人口は2015年時点で3540万人に上り、これは20年前の1995年と比べて4.4%増加しています。
また気候変動による洪水発生の危険性は上がり続け、発生頻度は2倍に上昇するとも言われています。
この本では最近の洪水被害事例や崖崩れ、高潮などの被害を詳述していきますが、それに備える対策としては川の堤防を強化するだけでは足りないということも言われており、国交省も流域治水という考え方に方針転換しています。
流域治水の考え方の中では、危険度の高い地域は市街化を抑制するということも取り入れられています。
すでに都市計画や条例で危険地への居住を制限するよう誘導したり、転居を促すと言った対策を始めている自治体もあります。
水害リスクの高いところをレッドゾーン指定し、その地域のリスクは土地や建物売買の際に説明する義務を負わせるものとしています。
ただし、それでもまだ危険地域への住宅建設が止まるとは言えず、また完全に実施することが難しい地域もあります。
さらに現在居住している人たちを移転させるということはさらに難しく、その費用に多少補助金を出したとしても実施することはなかなかできそうもありません。
これまでの建築では「耐水性能」ということはほとんど考えられていませんでした。
耐震性能は考慮されても、水害で床下床上浸水した場合の建築物の被害は実際には大きいにも関わらず、「土木学会に丸投げ」という状態だったそうです。
しかしようやく日本建築学会でも浸水した場合の被害軽減を考えるようになったとか。
住宅でも重要な部分は水没しても大丈夫なように耐水性を持たせるといった対策を始めています。
とはいえ、日本では人口が集中している平野部の多くが水害リスクを持っており、ある程度は危険が伴うのでしょう。
その中で、特に危険な地域からは人を撤退させるというのは難しいでしょうが効果的だということです。
東日本大震災で津波被害がひどかった時、「昔はここから下には家を建ててはいけない」と言われていた地域があったという事実が報道されました。
しかし徐々にそれは忘れられ海岸の便利な地域に家が建ち被害にあったということです。
それはどうも洪水被害の場合も同様のようです。
その是正は難しいことでしょうが、少しずつでも進めるべきなのでしょう。