爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

やっぱり出てきた川辺川ダム待望論

先月に大規模な水害を引き起こした球磨川の支流、川辺川には大きなダムを作るという計画がありましたが、現熊本県知事の蒲島郁夫氏が知事となった際に計画を中止しました。

当時はダム建設に対して否定的な意見が多く、ダムによらない治水ということを目指すとされました。

 

しかし、今回の大水害はもしも川辺川ダムが建設されていればかなり水量が少なくて済んだはずだという推計が発表され、ダム建設中止に反対であった人々が息を吹き返したようです。

 

www.asahi.com作りたくて仕方のなかった国交省出先機関ですので、話半分かもしれませんが、それでも「今回の水害」では大きな影響が出た可能性はあります。

 

これに対し、地元の市町村長などが控え目な言葉ながら、建設再開を求めるという声をあげています。

 

これに対し、ダム反対派はもしもダムがあっても水害は防げないという主張をしていますがどうでしょうか。

 

川辺川というのは、下の地図に見られるように、市房山山麓に発して人吉市を通り、八代市で海にそそぐ球磨川の支流で、人吉市内で球磨川に合流します。

地図の中に大きな四角でデータが入っていますが、その上部(北側)の山地から流れを集めて南下します。

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この地図でAとされているところの付近に川辺川ダムが予定されていました。

現状では、球磨川上流部には市房山の山麓のGと表記のあるあたりに市房ダムというものがあります。

これが、今回の水害では満水に近くなり、緊急放流せざるを得ないという状況になったのですが、それをすると下流で洪水が引き起こされる危険性が高いとして、ギリギリまで待ち何とかしのぎ切ったということも起こりました。

これも、ダムが決定的な治水効果にはつながらない理由だと思いますが、ここでは触れません。

 

さて、当然ながら「ダムの治水効果」はダムより上流側で降った雨だけに限られます。

いくら巨大なダムを作ってもその下流で降った雨は貯めることができません。

地図を見ればその「川辺川ダムに溜まる雨水」はかなり北側のみであることが分かるでしょう。

人吉盆地は周囲を山で囲まれていますが、もっとも深いのはその北側の山地ではあるのですが、全部ではありません。

つまり、川辺川ダムの治水効果というのはその上流部に大量の雨が降った場合に最大となるということです。

 

今回がそれであったのではないでしょうか。

たまたま、例の線状降水帯がかかったのがその付近であり、そのために「もしも川辺川ダムがあれば」最高の効果が得られた可能性があった。

しかし、「次の洪水」が今回同様であるとは言えません。

もしも、人吉南部や東部の山地に線状降水帯が長時間かかれば、いくら川辺川ダムを作ったところでなんの効果もないでしょう。

 

被害を受けた人々には申し訳ない話なのですが、やはり危険地帯からの移転がより効果的対策なのではと思います。