今まさに、感染症が世界中を覆っているようですが、人類の歴史というものは感染症とともに存在していたようなものです。
この本は2020年8月出版ですので、新型コロナウイルスについての記述も含まれていますが、それだけではなく他の多くの感染症についても説明されています。
それだけでなく、発酵などで人の役に立つ微生物についても触れられており、また微生物そのものについても簡単に説明されています。
これだけ大きく人類の社会が脅かされているのですが、その割にウイルスや細菌についての知識と言うものは広がらないままのようです。
多くの人にこの本で伝えられているものが広まったら、もう少し感染症に対する態度も変わってくるかもしれません。
なお、ちょっと盲点になるかもしれない知識というものもありました。
「滅菌、殺菌、消毒、除菌、抗菌」はどう違うか。
これもほとんどの人が正確な知識は持たないでしょう。
微生物を完全に死滅させるのは「滅菌」です。
よく使われる方法はオートクレーブという121℃の高温高圧の水蒸気で10分から20分という条件です。
消毒というのは、滅菌ほどではないが普通の細菌は死滅する条件です。
ただし、芽胞菌などという高温耐性の菌は生き残ることがあります。
殺菌、除菌、抗菌というのは定義が明確ではありません。
まあ、少しは菌を減らせるかな程度のものとも言えます。
乳酸菌が健康に良いというのは、日本人の多くが持っている感覚ですが、実ははっきりとした科学的根拠はまだ確立されていません。
EUはその根拠をメーカーに求めたものの、はかばかしい結果が出せるところは無く、2014年にEU域内では「プロバイオティクス」という言葉を使うことを禁止しています。
これも、適切な解説でしょう。
人体には常在菌というものがあり、それとの共棲が重要だということも明らかになってきていますが、これについても簡単ながら解説されています。
皮膚の常在菌は病原菌の体内への侵入を防ぐという効果もあります。
また、腸内細菌は人体の免疫にも強く関わっており、その役割も想像以上のものがあります。
これも今後さらに解明が進んで行くでしょう。
簡単な記述ですがよくまとまっている内容だと感じました。