爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

”低温調理”のレバーでカンピロバクター食中毒発生

「低温調理」の牛レバーなどを食べた人がカンピロバクター食中毒で、ギランバレー症候群を発症したというニュースです。

レバ刺し食べた2人が食中毒、1人は重体 茨城の飲食店 | クリップ

 

どうやらこの店は「低温調理」をしたレバーと言うものを売り物にしているようです。

 

生レバーによる食中毒、特にカンピロバクターによるものが大きな問題となり、生レバーの飲食店での提供は厳しく制限されるようになりましたが、どうしてもそれを食べたいという要望があるようです。

 

そこで、レバーのタンパク質の加熱変性を防ぎながら最低限の殺菌効果を出す温度で一定時間保持しようという、「低温調理」というものが流行っているそうです。

 

そのための調理器具も販売されています。

boniq.store

65℃を越えると肉のタンパク質の変性が始まるので、その寸前の63℃に保持して30分間加熱すれば微生物が死滅するということのようです。

 

上記の飲食店も、こういった調理器を使用して低温調理と言うものをやっているということでしょう。

 

しかし、「怖ろしいことをやっているな」と言う感想を持ってしまいます。

 

仕事で長年微生物を取り扱うことをやっていましたが、様々なものの滅菌ということは実験の基本ですが気を使わなければ失敗するものでした。

 

バチルスやクロストリジウムといった芽胞菌は120℃の加圧殺菌でも生き残ることがあり、コンタミネーションの危険性が高いものです。

通常の食中毒菌、カンピロバクターも含め、さほど温度耐性は高くないのできちんと温度が上がれば大丈夫なのですが、対象とする物質の状態によって違いがあります。

 

一番大切なのは、「対象の内部まで指定温度まで上がること」なのですが、これが結構難しいものです。

肉の塊などでは、中心部分まで温度上昇が行き渡るにはかなりの時間がかかります。

 

ただし、通常は表面だけに微生物汚染があり、挽き肉を固めたような加工成型肉ではない生肉であれば中心部は清浄と言えますので、加熱が不十分でも危険性は少ないのですが、微生物の種類によっては肉の中心部まで侵入することもあるのではないかと思います。

カンピロバクターはその危険性があると思いますし、しかも非常に少ない菌数でも体内での増殖力が強いために食中毒を起こす危険性が高いものです。

 

いくら、装置としては立派なものを使っていても、使い方がいい加減では危険性は無くせません。

他の99人は無事でも、100人目に食中毒を起こすこともありえます。

あまり冒険はしない方がよろしいかと思います。