気候変動と言っていたのが、「気候危機」に。
言葉はますます煽りを強めていますが、どこまで真剣に考えているのでしょうか。
14日付け熊本日日新聞の社説にありましたが、他のメディアの論調もほぼ同様なので、いちおう熊日を例に取り上げてみます。
「気候危機」などと言う言葉は、今年の環境省の環境白書からでしょうか。
まったく、言葉の使い方だけは上手にポイントを掴んでいるようです。
多発する気象災害に怖れる人心に付けこみ、有利に進めたいという下心がはっきりと見て取れます。
このような気象災害多発が温暖化によるものだということも既定事実のように語られるのがすでにお決まりのようです。
いずれについても疑問があるのですが、そういったところを考え直そうという人はもはや少数派のようです。
その点についても多くの問題点があるのですが、ここでは一応それは不問としておきましょう。
「二酸化炭素の濃度上昇により今の気象災害多発が起きている」ということを認めましょう。
「それならば、なぜ効果的な手段で迅速に対処しようとしないのか」がここで言いたいことです。
この熊日新聞の社説でも「政府が温暖化対策に消極的なのは理解できない」とするのみです。
政府の行う温暖化対策、二酸化炭素排出削減策が、量も少なく時期も遅いということが言いたいようです。
(なお、これは熊日新聞だけでなく多くのメディアが同様の主張です、たまたまうちの新聞が熊日なのでそれを利用しただけです)
本当に、「現在の気象災害多発」が「二酸化炭素排出量増加」によるものなら、自分たちでもやるべきことがいくらでもあるのでは。
二酸化炭素排出の主要な源として言われている化石燃料、石油・石炭・天然ガスですが、これは現代文明の基本となっているエネルギー源です。
これを削減するということは直接的に文明を縮減することにつながってしまいかねないということから、「代替エネルギー開発」が絶対視され、それができるまでは化石燃料エネルギー削減にも取り掛かれないという雰囲気です。
そこで、何もやらないわけには行かないが差し障りのないところからとでも言いたいのか、「石炭火力発電(それも旧式の物だけ)の廃止」とか「レジ袋有料化(廃止とも言えず)」といった児戯に等しいものだけです。
化石燃料エネルギーがどのように使われているのか、資源エネルギー庁の出しているパンフレットから見てみましょう。
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2017pdf/whitepaper2017pdf_2_2.pdf
世界の一次エネルギー比率です。
5年前の数字ですが、石油・石炭・天然ガスの化石燃料御三家がほぼ90%を占め、原子力・水力がわずか。そして再生エネルギーは微々たるものです。
その中で、石油がどのように使われているか。
なんと、65%が輸送用、つまり自動車用燃料や飛行機、船舶の燃料として使われています。
石油化学原料、つまりプラスチックなどの原料は11%と意外に少ないことが分かります。
つまり、このような状況で「石油使用量削減」をするためには、どうにかして輸送用燃料を減らす、つまり「自動車を減らす」のが最善であることが分かります。
こういうと、「すぐに電気自動車化を進めなければ」という反応をする人が多いでしょうが、それは「本当に可能」でしょうか。
そのためには大量の電池が必要となり、そのための資源が必要となります。
現在ではまだ希少資源が電池のためには必要ですが、これが全世界で数億台になろうという自動車すべてに搭載されることが可能かどうか。
さらに、今は簡単に考えられていますが「電気自動車の充電」も大変なことになります。
まだごくわずかな数の電気自動車だけを充電しているため、電力供給にも余裕がありますが、これが全国すべての自動車に充電するようになっても、電力供給ができるでしょうか。
そうではなく、「自動車に頼った現代文明からの転換」が必要となるのです。
石炭についても使用割合を見てみましょう。
こちらはなんと、62%が発電用。
つまり、電力供給の大きな部分は石炭に頼っていることが分かります。
それでも石炭火力発電廃止などと言っていますが、どうするつもりでしょうか。
実は、「電気の使用自体大幅に減らさなければならない」ということです。
他人任せの自然エネルギー装置開発など、いつまでたっても実用化できません。
これこそまさに、「自分でできることを少しずつ」ではないでしょうか。
自分の家庭で使う電力を大幅に削減していくこと、それが必要な事であり、政府の対応など待っていては間に合いません。
それでなくても、電力会社の戦略で家庭で使う電気を増やそうという動きが強まっています。
そこに変革を進めなければ、気候危機からの脱却などまったく不可能でしょう。
気候危機から逃れるために、まず何をしなければならないか。
それは「自動車社会からの脱却」と「家庭使用の電力の大幅削減」が第一の方策です。
それなしに、政府を批判しているだけではいつまでも大雨の恐怖から逃れられないでしょう。