ドイツの哲学者ヤスパースが示した、「軸の時代」というものは、老子、孔子、ブッダ、ソクラテス、プラトンなどの宗教家、哲学者などがあちこちで出現した紀元前800年から200年までの時代を指していますが、日本にこの「軸の時代」というものがあるのかどうか。
それは日本では13世紀、鎌倉時代の一時期がそれにあたるのかもしれません。
それまでに日本中を覆っていた仏教というものに対し、様々な方向から変革を加えようとして、法然、親鸞、道元、日蓮などが新たな仏教を打ち立てました。
序の文で編者の山折さんがこのように書いていますが、本文の方はそれとはあまり関係なく、仏教伝来から現代に至るまでの全時代について、大角さんが多くの仏教人の伝記を書いています。
そこには「僧」だけではなく、聖徳太子、聖武天皇や種田山頭火、宮沢賢治までという、仏教に関わる人はかなり広い範囲で選ばれています。
それでも、「その他の人々」はせいぜい1ページ程度の簡略な記載に留まっており、やはり上記の「軸の時代」に関わる人々の数ページを費やしての説明は詳細なものです。
浄土宗の祖の法然、浄土真宗の祖の親鸞、曹洞宗の祖の道元、日蓮宗の祖の日蓮などは数十ページもの詳細な伝記があり、特に道元が詳しく描かれています。
禅の公案、禅のやり方の図解、禅寺での作法と心得まで詳述されており、ちょっと他とのバランスが壊れているようです。
最後にかかれている「宮沢賢治」ですが、彼が仏教に関係していたということは知りませんでした。
しかし、その活動の基底には「法華文学の創造」という目的があったということです。
もちろん、作品中に法華経の言葉などが出てくるということは無いのですが、臨終を覚悟した時には南無妙法蓮華経の題目と釈迦四大菩薩の名号を手帳のページ全体に書いていたそうです。
日本の歴史を通して精神世界に大きく影響を与えてきたのはやはり仏教でしょう。
そのポイントとして名僧という人々を知っておくのも必要なことでしょう。