オランダ人の国際政治学者でジャーナリストと言うウォルフレンさんですが、30年以上日本の政治状況を見てこられています。
そのウォルフレンさんが2006年に出された本ですが、ちょうど時は小泉政治のところで、アメリカに従うあまりにアジア各国の神経を逆なでするような行動が目立っていた時代でした。
「鎖国」とは言うまでもなく江戸時代の幕府が取った政策ですが、著者は日本の戦後の外交政策も「鎖国」だったと言えるのではないかと提言しています。
それは、軍備は言うまでもなく外交方針すらもアメリカにすべてお任せというものであり、自主方針もないまま海外との交際というものは、まさにアメリカの言うがままの状態で「鎖国」と言っても差し支えないということです。
本当の「鎖国」、政策をとっていた江戸幕府が敗れ明治政府が立って以降、日本は対外拡張主義を取り、それが海外と衝突して無残にも敗れ去りました。
そしてアメリカを中心とする占領軍による屈辱的占領状態を経験し、ようやく講和条約を結んだのですが、それ以降も実はアメリカを宗主国とする被保護国状態からは抜け出していません。
経済的には自由に発展していたように見えますが、対外的な自主方針はなにもなく、軍備と外交をアメリカに売り渡した状態のままでした。
しかし、アメリカの方は大きく変わってきてしまいました。
もはや日本を庇護する力もその意志もないようです。
それにもかかわらず、日本の政治家も官僚もそれを自覚せず、いまだにアメリカに附いて行きさえすれば大丈夫という感覚のままのようです。
アメリカは世界で孤立していますが、それにアメリカ人は皆気がついていません。
政治家も含めて国民は国内での政争に明け暮れ、海外の状況にも盲目です。世界状況について考えないことでは、アメリカ人が最もひどい状況です。
それでいて、アメリカ人の誰もが自国の力というものを過信しています。
もはや世界秩序を維持するなどといった国力は無いにも関わらずそれを信じています。
そして、日本の政治家も官僚もそれを疑っていません。
アメリカは常に仮想敵国を想定することで国内をまとめ、最大の産業である軍事産業への資金投入を続けてきました。
ソ連の亡き後は「ならず者国家」を標的にしましたが、それはあまりにも小さな存在であり上手く行きませんでした。
そこに起こったのが911事件、それを好機としてブッシュは「テロとの戦い」へと方向を変えました。
しかし、この相手もアメリカの軍事産業を潤すようなものではなく、アメリカ国内も混迷を深めさらに分断が進んでいきます。
(この時点で、アメリカの労働者のリベラル派に対する反感を挙げています。それは10年後にトランプ政権誕生につながるのですが、それを予言しているかのようです)
仮想敵国を持たなければやっていけないアメリカは次に中国を想定しているかのようです。
それに従うだけの日本もその露払いをしているようです。
しかし、実は中国はすでに日本を上回る量のアメリカ国債を保有しています。
ドルの価値を日本と中国とで支えているとも言えます。
アメリカは借金をしているように見えて、それで実は強大な軍備を備え、それを用いて世界の覇権を取っているということです。
日本も中国もその金を出すことでアメリカに製品輸出を続けることができ、見せかけの繁栄がこの3国の間に続くことになります。
このような覇権体制は永遠に続くはずもありません。
いつかは破綻するのですが、それが何年先なのか、どういった終わり方をするのかが問題です。
ただし、その時に主体的に動けるのは中国だけであり、日本は身動きもできないまま破綻するのは間違いないでしょう。
- 作者: カレル・ヴァンウォルフレン,Karel van Wolferen,井上実
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
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少しでも早く自主的に考えることのできる官僚と政治家を持つべきだということですが、「それは絶対に無理」でしょう。
貴重なご意見ですが、無駄になりそうです。
当時の小泉首相よりはるかにアメリカ盲従度の高い安倍が政権を取りしかもそれに日本国民は何の疑問も持っていないようです。
現在のウォルフレンさんの意見が知りたいところです。