「かけひき」というとポーカーなどのゲームで様々な手を使って勝ちを収めるというイメージがありますが、実は国と国との外交、戦争、会社の間の競争などあらゆる交渉には付き物です。
それが分かっていない日本の国家外交は上手く行かないというのも明らかでしょう。
この本の著者、唐津さんはシステム工学を早くから取り入れ、大企業の技術部門トップや大学教授などを歴任したという方で、本の端々にどうしても「上から目線」というものが強く感じられますので、そういったものが嫌いな方には読みにくい本でしょう。
情報というものがすべての戦略の基本になるということは当然なのですが、それを効果的に収集するというのも難しいことです。
ニセの情報というものも数多く、また謀略として故意に流すものもあります。
ヒトラーをあわてさせたというエピソードは興味深いものです。
第二次世界大戦開戦直前に、各国の軍備に関するレポートがイギリスで出版されたのですが、その中でドイツに関する部分が実に詳しく、指揮官の性格まで描写されていました。
それを読んだヒトラーはこのような極秘情報を誰かが流出させたと考え、このレポートの著者をおびき出しドイツに連行して取り調べたそうです。
ところが、取り調べの結果は彼は毎日の新聞や雑誌、ラジオニュースしか見ておらず、それを丹念に整理することで総合して真実に迫ったそうです。
国家間の外交でも「かけひき」は重要です。
アメリカは様々な交渉術、中には脅しすかし、強弁等の手段を使っていますが、日本は手も無くそれに押しまくられます。
しかし、アジア諸国はそのような相手に対してもかなり善戦しており、中国や北朝鮮、マレーシア、シンガポールといった国々はけっこう主張を通しているようです。
さすがに中国、インドは4000年の歴史でかけひき技術も相当なものとしています。
最終章ではデータというものの利用法についても書かれています。
日米貿易交渉ではアメリカはデータを示すように見せながら実際は適当に編集し有利に見えるようにしたものを示しました。
その手を見抜いて対抗する能力が重要なのですが、日本側はまったくそれに気づかず押しまくられる一方でした。
こういった数字の裏側を見抜くにも、正しい情報を数多く取り入れて整理する能力が必要です。
まあ、おっしゃる通りなんですが、それが難しいのでしょう。
現在ではうわべだけは情報が溢れているようで、ガセネタばかりになっているようです。