自称イタリア人で、日本文化研究家、戯作者というパオロさんが、父と子の関係にまつわる問題をさまざまな方向から取り上げてちょっとひねった文章にしてしまうというもので、40の小話からなっていますが、元々は数篇をいくつかの雑誌に掲載したもので、それを一冊の本にしようということになり、書き足した(足した方がはるかに多いようですが)という成り立ちの作品集です。
あちこちに出てくるのが、一般的なイメージから見るとちょっと盲点になってしまっているような、しかし聞いてみればもっともというような挿話です。
たとえば、
明治時代の大学生のほとんどは英語を自在に使えた。というのも、授業のすべてを外国人が英語で教えていたからである。
団塊の世代は終身雇用制で安泰なサラリーマン生活を送り、現在は十分な年金で悠々自適の生活をしているというのはごく一部の人だけの話。団塊世代の大学進学率はせいぜい2割。その他の中卒・高卒で就職した人々は終身雇用制などは憧れるだけ。女性はほとんど結婚したら辞めることになっていた。実際に終身雇用されたというのもやはり2割程度。
フリーターがここ20年くらいで出現したというのもウソ。かつても日雇いでその日暮らしなんていう人間は掃いて捨てるほど居た。高度成長期は皆正社員で働いていたというのも一部だけのイメージ。
リクルートスーツが黒ばかりというのは、21世紀に入ってからのこと。それまでは紺とグレーが主流だった。
なるほどという思いがします。
- 作者: パオロマッツァリーノ,Paolo Mazzarino
- 出版社/メーカー: 春秋社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 単行本
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