女性の貧困という問題はここにきてさらに重大なものとなっています。
この本ではかなり早い時期に取材を始め、多くの女性にインタビューし、それをもとにこの本を出版したのが2016年ということで、その後はさらに状態は悪化しているのでしょう。
貧困に苦しむ女性は、学歴や仕事の経験などの条件は様々で、高卒中卒が多いというわけでもなく、高学歴で以前は高収入を得ていた人でも簡単に収入を失ってしまう例も多数あるようです。
多くの女性からのインタビューをもとにこの本を書いていますが、もちろんすべての女性は仮名で紹介されているものの、その経緯や体験を想像するだけでも胸が苦しくなるほどのものです。
非正規雇用の増加と言うことが社会問題となりましたが、最初の頃はあくまでも「男性の非正規雇用」が注目されていました。
そこにはこれまでの「男性中心の家庭」という価値観がまだ色濃く影響しており、その男性でも非正規雇用が増えた、すなわち家庭の存続も危ういといった危機感を増すものでした。
しかし、実際には非正規雇用に苦しむのは女性の方がはるかに多くなっています。
そこには、以前から女性の仕事は家計の助け程度で少なくても仕方ないという常識が残っていました。
ところが、そのような「家庭」そのものもセーフティーネットとはなれないのが現状です。
生まれ育った家庭でも、親もリストラに遭い収入減とか、親の暴力暴言にさらされるとか、女性の行き場所が奪われるようなことが多数発生しています。
また、結婚して男性に養ってもらうと言うこと自体、非常に厳しいものです。
男性の収入も激減、結婚することすら難しいということです。
さらに、結婚し子供もできても離婚が増え続けており、子連れの母親の就業条件は悪化し収入は減り続けています。
非正規雇用者の状況がひどいというのは言うまでもないのですが、正規社員として雇用されても現在ではとても安心できるものではありません。
女性であっても、今では深夜までの仕事は当たり前、しかも残業代はほとんど出ないといったブラック企業がそこかしこにあり、そういったところに正社員として就職してもすぐに体が続かなくなり退職、それが貧乏へとつながっています。
無理な仕事で身体を壊す例も頻発しており、それが次の就職を難しくしています。
一度正社員を辞めてしまえば次の正社員就職が厳しくなるのも変わらず、非正規となって低収入になることとなります。
男女同一賃金とか、育児休業制の充実とか、そういった条件が良くなっているように見えますが、そのような待遇を受けられるのはごく一部の限られた恵まれた人のみです。
多くの女性はそのような待遇の対象ともなれず、ギリギリの生活で何とか生きているのみなのでしょう。
このような人々を増やし続け、それで「少子化対策」も無いもんだと思います。
日本社会の貧困化は見えにくい形で深く進行しているようです。