FOOCOM.NETの専門家コラムで栄養疫学の分野での興味深い話を連載されている、児林聡美さんの記事に面白いものがありました。
現在、東京大学の公共健康医学専攻というところで栄養疫学の研究をされている児林さんですが、これまでにもFOOCOM.NETでその研究の一端を書かれています。
http://sohujojo.hatenablog.com/entry/2016/04/06/063000
栄養疫学とは広い範囲の人々の栄養摂取、食事の現状を調べ、その栄養状況の問題点を探るという学問の一つの方法ですが、調査対象の人たちが何を食べているのか、本当のところを調べるというのは難しいことのようです。
調査方法としては、①食事記録法、②食物摂取頻度法、③陰膳法などの種類があります。
①、②は対象者に記録表を配布し、それに記入してもらったり、調査員が直接面談して聞き出して記録したりというもので、③は実際に食べたものと同じ食物を化学分析して内容を調べるというものです。
①は簡便でコストもかからず多くの人に聞くことができますが、正確性はかなり落ちる。
③は非常に正確な値を出すことができますが、手間と費用がかかり多くのサンプルを分析することはできません。
実際は多くの場合は対象者に自己申告で記録してもらうというのが普通の調査方法になっているようです。
しかし、その「自己申告」というのが曲者のようです。
自己申告の摂取食物量と、分析法による摂取量とを比べるという「意地悪な」研究調査をしたという報告があり、その結果が引用されています。
それによると、自己申告の摂取カロリーは必ず「実際の摂取量より低い」という特徴があり、しかも「その差は太っている人ほど大きい」だそうです。
つまり、太っている人ほど自分が食べたと思っている量は、実際の摂取量より少ないそうです。
自分自身もそうだったので、よくわかりますが、「私はそんなに食べていないのに太る」と思うのは同じのようです。
それが実は心理的な作用のせいなのかもしれません。
児林さんの記事の最後は次のように結ばれています。
肥満の方に対する食事のとり方のアドバイスとして「食事を控えめに」と言われることもあるでしょう。
けれども肥満を解消しようと思ったら、自分で食事を控えることよりも、間食を注意してくれる家族や友達を大切にしたほうがよいのかもしれません。
やれやれ、気をつけなければいけません。