FOOCOM.NETの専門家コラムという欄に今回あらたに児林聡美さんが、「食情報、栄養疫学で読み解く」というコーナーをスタートされました。
最初の記事は、「きっかけは鮭茶漬け、栄養疫学が自分の研究フィールドになったわけ」というものです。
きっかけは鮭茶漬け? 栄養疫学が自分のフィールドになったわけ | FOOCOM.NET
疫学についてはこのブログでこれまでにも何度か取り上げていますが、医学分野でも疫学というものはなかなか正当に評価されづらいもののようで、どうしても実験医学や臨床医学の方が重要視されがちです。
栄養学分野でも同様の状況と思います。
しかし、動物や培養細胞を使わざるを得ない(人体を使うわけには行きません)実験より人体での働きを直接扱うことができる疫学というものは思う以上に価値が有るものかもしれません。
児林さんの初回の記事は、栄養疫学というものを研究しようとするきっかけになったという、ある出来事についてです。
学生時代には実験に携わっておられたのですが、その実験室の先輩が研究した成果で、「培養がん細胞に緑茶成分を与えると増殖が制限される。ビタミンAが存在するとその効果が強まる」という結果をある学会で発表されたそうです。
その直後に、テレビ番組で「鮭茶漬けを食べるとガンに効く」ということが報じられました。その根拠とされていたのがその先輩の学会発表だったということで、あくまでも培養したガン細胞に緑茶成分とビタミンAの効果というものであったのが、勝手に際限なく拡大解釈されて「鮭茶漬け」になっていました。
そのような状況というのは、実験重視の弊害とも考えられ、それ以来実験に頼り過ぎない方向ということで疫学の方面へ進むことにしたそうです。
このような事例はいくらでもありそうですが、特に関心を集めるガンについては、培養ガン細胞にいろいろな化学物質などを投じてその効果を見るといった実験は多数行われており、ある程度の効果があるものは頻繁に報告されていますが、それが実用化までたどり着くことはほとんどありません。
これが実験動物での試行であれば、培養細胞よりは幾分かは実用化に近いのでしょうが、それでも人体の薬品に至るまでは遠い道のりがあります。
その点、疫学調査では思うような実験計画の実施ということは出来ませんが、間違いなく人体を通した影響を見ることができるという点では優れたものでしょう。
この後、FOOCOM.NETでのこの記事は連載されていくと思いますが、内容には大いに期待しています。