著者の小口さんは私より少し年下のようです。
そのせいか、盛んに鉄道写真を撮りだした頃には蒸気機関車はもはやほとんど残っていなかったのでしょうか。
だからというわけでもないのでしょうが、その当時はまだ大活躍をしていた旧型の電気機関車やディーゼル機関車の写真をよく撮っていたそうです。
電気機関車でも旧型と呼ばれるものは、大正末に作り始められ昭和前半に製造された、一般には茶色(少し赤みがかった小豆色に近いもの)に塗装されたEF10などの型式のものです。
その後、戦後になりEF59までは旧型と言われることが多いようですが、EF60から後は直流用は青い塗装、交流用は赤に塗られ、華やかになっていきました。
小口さんのこの本は本人が撮影をした時系列にそって並べられています。
昭和51年、東北線の赤羽付近で撮られたEF57から始まっていますが、その当時はまだ急行にも使用されていたようです。
翌年は初めての撮影旅行として播但線にまで足を伸ばしディーゼル機関車のDD54を撮影しています。
まだ中学卒業時の春休みだったそうですが、兵庫まで遠出をしたと書いてあります。
DD54は流線型の形状は近代的に感じます。1966年に製造開始されたのですが、機構が新しすぎたのか故障が多くすぐに運行休止となり廃車になってしまいました。
これらの写真は貴重なものかもしれません。
昭和52年、54年には旧型電気機関車の活躍の場を写真に収めるために身延線、飯田線に遠征しています。
私も飯田線の旧型車両はいくつか写真に撮っていますが、当時は大活躍をしていました。
EF10の最後の勇姿を追ってのことだったようです。
本書に書かれているように、当時は金もなくカメラは中古でフィルムも白黒しか買えなかったそうです。そのために、本書の写真はすべてモノクロですが、お若い頃から非常に写真の腕は優れていたということがよく分かるものとなっています。
私も同じ年頃に鉄道写真撮影に出かけたものですが、その頃の写真を見ても稚拙な腕前で恥ずかしいだけです。
本にまでできるほどの写真を中高生の年頃から撮れるというのは素晴らしいものでしょう。
それとともに、旧型機関車の味というものがよく伝わってくる写真でした。