爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「イスラム国の正体」黒井文太郎著

本書は2014年12月出版、イスラム国はその年6月にイラク第2の都市モスルを制圧し、アメリカなどの空爆などを受けてもまだかなりの勢力を保っていた時でした。

しかし、その後も徐々に勢力範囲を狭めながらも支配地域を維持しており、さらにヨーロッパなどでもテロ攻撃を激化させています。

 

イスラム国の名はその徹底した残虐性ですぐに知られるようになりました。

捕虜や民間人の大量虐殺、外国人捕虜の処刑や女性の奴隷化など聞くだけでもおぞましい行為をしかもインターネットを通じて自ら公表しているということで世界中の注目を集めています。

 

イラク戦争が集結したあと、イラクはそれまでのフセイン政権下で抑圧されていたシーア派が政権を取りますが、その姿勢はスンニー派の弾圧であり、かえって彼らの反抗を招きました。

そしてイラク政権とアメリカ軍に対してのテロ活動も盛んになっていきますが、その中で台頭したのがヨルダン人テロリストのザルカウィを中心とする「タウヒード・ジハード団」でした。

彼らは外国人の誘拐と処刑を頻繁に行なうようになります。

ザルカウィはそれ以前からもオサマ・ビン・ラディンと関係はありましたが、彼らの配下というわけではなく独自の活動をしていました。

その後名称は「イラクアルカイダ」としてテロ活動を続けていたのですが、ザルカウィが2006年6月にアメリカ軍に殺害されます。

その後継としてイラク人のアブ・アブダラ・ラシード・バクダディが就任し名称を「イラクイスラム国」としました。

対米テロ、対シーア派テロの活動を続け、メンバーも2007年に数千人規模になります。

しかし、アメリカの撤退に向けアメリカはスンニー派部族の懐柔を始めたためにその勢力が台頭してイスラム国は衰退していきます。

2010年にはバクダディが死ぬのですが、その後指導者となったアブバクル・バクダティがシーア派政府や住民に対するテロを激化させ勢力を伸長させることとなりました。

それでもイラク国内ではなかなか成長できなかったイスラム国ですが、シリアの内戦が激化したことでシリア国内で勢力を伸ばすことに成功します。

シリア東北部で広い支配地を確保したイスラム国は一転してイラク西部に進出しますが、それまでに捕虜の大量虐殺などの行為でイラク軍に恐怖を与えていたために、イラク軍はほとんど戦わずして逃亡し、そこで大量の大型兵器や軍資金を得たイスラム国は大きく発展することとなってしまいました。

 

そのため、オバマ大統領は2014年8月に空爆を開始します。しかしその効果は限定的でありなかなか痛手を与えるまでにはなりません。

地上軍の展開が伴わなければなりませんが、それを担う勢力は軍備も劣悪、なかなか反撃もできないようです。

 

イスラム国には外国人が加入しておりそのメンバーがさらに残虐行為をしていると言われますが、実際はヨーロッパ人は少ないようです。

ほとんどが中東などの他国のイスラム教徒と、イスラム教徒のヨーロッパ移民などです。

 

シリアでの内戦が終わらない限り本格的なイスラム国討伐も難しいのですが、ロシアの加担もあり内戦終結はほど遠い状況です。これは2年たった現在でも変わらないようです。

 

この問題解決にはまだまだ多くの時がかかり、犠牲が伴うでしょう。