この本は先々週に読み、この原稿は4月12日、熊本地震発生の2日前に書いていました。自分の足元の危険性も分からずに首都圏の心配をしていたことになりますが、それは仕方のない事でしょう。
災害研究者や担当官などにとっても異例ずくめの熊本地震でしたが、それについての知識不足はあったとしても、彼らが主張している首都直下地震の危険性は的外れとは言えないでしょう。より切迫感を持って見るべきものと思います。
著者の平田さんもテレビでの解説で何度かお見かけしました。今度の地震でより正確な学説に近づけられたのではないかと期待します。
それでは用意の原稿へ。
東京を含む南関東地方、首都圏は日本の中でも特に地震の多い地方です。
これまでにも数々の大地震を経験し、その災害も大きなものでした。
今後、必ず来るであろう次の地震ではある程度の災害は間違いなく受けるでしょうが、それをできるだけ小さく留めるという対策は必要なところです。
これまでも数々の本が書かれていますが、最新の情報も含めて今年の2月に出版されたばかりの本です。東大地震研究所の平田教授が書かれています。
「首都直下地震」という言葉は地震学の用語ではありません。政府が行政上の必要から名付けたもので、首都直下地震対策特別措置法で定められています。
それでは、どのようなものが首都直下地震となるかというと、それは「発生したら大きな被害が出るもの」というものであり、一つの形態ではありません。
ここではM8以上となる大正関東大震災タイプのいわゆる「海溝型地震」と、M7程度の内陸型「活断層型地震」の双方が対象となります。どちらが来ても非常に大きな災害となる可能性があるということです。
なお、「海溝型」「活断層型」のどちらも学術用語ではないそうです。
しかし、M7程度の地震がこの地域では100年間に5回は起こっているというのは間違いのない事実です。それがどちらの原因によるかということは重要ではありません。
ただし、その原因によって「規則性」がある場合とない場合があります。
南海トラフによる地震は規則的に発生することが知られています。相模トラフのものもそこまでではなくてもある程度の規則性があるようです。
しかし、南関東で起きるM7程度の地震はほとんど規則性が無いといえるようです。
地震による被害というのは、単に地震の大きさ、強さによるばかりではなく、その性格によっても大きく異なります。東日本大震災の場合は被害者のほとんどは津波で死亡しました。関東大震災の場合は火災による焼死者だったのです。阪神淡路大震災では圧死者が多かったというのが特徴になります。
首都圏で起きる次の地震がどのタイプになるかということは今は分かりません。
内閣府や東京都などが繰り返し被害想定を作成していますが、そこでも地震発生の震源地、日時により大きな差ができるとしています。
もっとも被害が大きいのは都心南部直下地震(M7.3)とされています。
上述したように、プレート境界に起きる大正関東大震災タイプのM8以上の大地震はある程度規則的に起きますが、複雑な関東の地盤で起きるM7程度のものはまったく規則性はないようです。確率的にも予測は難しいようで、いつ起きても不思議ではないというところです。
いつ起きても不思議ではない首都直下地震ですが、対策はいくらでもやるべきことはありそうです。建物の耐震性を向上させることで予測される被害者数も大きく減らせるのですが、なかなか困難なことのようです。
いつかは起きるのでしょうが、できれば被害者を少なく抑えたいものです。