爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「かつて誰も調べなかった100の謎」堀井憲一郎著

1995年から20年近くにわたり週刊文春で連載されていた「ホリイのずんずん調査」と言うコーナーがあったそうですが、2011年に掲載が終了しました。

これまで掲載されてきた調査の中から100件を選び、2013年現在のコメントもつけて一冊の本としました。

 

まあ、普通の人ならちょっと疑問に思うかもしれないけれど、とても調べてみようなどとは考えない様な事を”ずんずん”と調べていったということで、アルバイトのスタッフとともに当たってきたそうです。

 

吉野家の牛丼の「つゆだく」といのが許せなくて154店食べ歩いたとか、昼から心地よく飲める蕎麦屋を探すとか、この辺は実地に店を回って調べています。

さらに、「郵便ポストの回収は表示されている時間どおりに来るのか」とか、「シンデレラエクスプレスで本当にキスしたカップルは何組か」といったアホらしい調査もマジメに実行しています。

 

そんな中から特に興味を惹かれたものを。

 

「寿司を”1カン”と数えだしたのはいつからか」

最近は寿司をカンで数えるのが普通になっていますが、確かに昔はそのような言葉は聞いたこともありませんでした。

調査でも、バブル期には高級すし店の記事と言うのがあちこちの雑誌などに紹介されていますが、寿司をカンで数えるという記述は見られなかったようです。

しかし、1991年の「ハナコ」の記事からカン表記が出てきたということです。

その言葉の根拠もいわれも不明のようです。

バブルが終わったちょうどそのころの雰囲気と合っているということです。

 

「7年かけて1万席聞いてもかからなかった落語のネタ」

調査の総数がすごいものです。毎日聞いても1日当たり4席に当たるということです。

多い方からいうと、「子ほめ」「時そば」「初天神」といったところですが、まったく出なかったものは「王子の幇間」「大仏餅」「なめる」「胡椒の悔やみ」「首ったけ」「猫怪談」などだそうです。

これらは先代の文楽や円生が得意としていたものですが、最近ではやる人がいないとか。難しいしやっても受けないということがあるのでしょう。

 

「新聞の三行広告の調査」

かつては探し人をするのに新聞に広告を出すということが行われました。私もそれは見た記憶があります。

例えば「話はついた。連絡されたし。父」といったものや、「事情を聞いた。心配するな。連絡を待つ。父母姉」といったものが新聞の社会面の下の方に並んでいたものでした。

ホリイさんの調査によると、これらの新聞広告は1998年には32件あったそうです。しかし、翌年にはいきなり9件に減少、その後数年はその程度で続きますが、2007年の1件を最後に消滅しました。

結局は、人探しの対象となるような家出人が新聞を読むという状況がまったく無くなったということです。

今では家出人以外ても若い一人暮らしの人はまず新聞などは購読していないでしょう。

 

他にも傑作な調査がいろいろと紹介されていました。アルバイトの女子大生(当時)にやらせたまま著者が忘れてしまったというものもあったそうですが、なんとか記事にしてごまかしたとか。

まあ、金はかかったかもしれませんが、面白い企画だったと思います。