二酸化炭素による温暖化を防ぐためには原子力発電が必要と言う意味での「環境」ですので、当然のことながら2011年福島原発事故以前の本であり、それ以降はこのようなことは言っていないだろうと思ったのですが、この著者はそうでもないようです。調べてみると有名な原発推進論者のようです。
著者の中村さんは読売新聞の科学記者をつとめその後論説委員まで上ったという人で、読売は始めから原発推進という経緯もありますので、その路線で今も続いているのでしょうか。
ほかにも「原子力と報道」という本も出ているようです。
石油などの化石燃料の消費により大気中の二酸化炭素が増加して温暖化するという点ではIPCCの言うがままですが、それにさらにピークオイル説も付け加えて石油依存に警鐘を鳴らしています。自然エネルギーなるものの実用性も疑問視し、結局原子力、それも増殖炉によるリサイクル付きのものが必要と言うことです。
一見科学的な論説に従っているようですが、オイルピークだけでなくすべての化石燃料には限度がありやがて枯渇に向かうわけですので、「このまま続けば温暖化」という温暖化説論者のお決まりの文句はそもそも両立しません。
「今世紀末まで二酸化炭素排出が続けば」と、科学的な前提を付けているように見える言い方が実はその決定的な誤りを明らかにしています。「そんなに化石燃料は続きません」
ということで、これ以上内容を論じても仕方がないのですが、正力以来の伝統?に忠実な論説という面白い見世物でした。