爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「真実のビートルズ・サウンド」川瀬泰雄著

著者は音楽プロデユーサーとして井上陽水松田聖子などの曲を作ってきたということですが、それ以上に非常なビートルズ・マニアということでビートルズの曲の細部にわたるまでを検討したそうです。
職業柄、すべての製作技術に通じていますのでビートルズがどのようなやり方でレコードを作っていたかと言うこともほとんど解析できたということです。
私も昔からビートルズが好きでたいていの曲は耳にしてきていますが、この本に書かれているようなことには気付かずになんとなく聞いているだけでした。プロとの違いと言うのを痛感させられるところです。

例えば、初期の傑作のオールマイラヴィングでは、ジョンの演奏する3連符のリズムギターというのが有名ですが、それ以外にも別のリズムギターが入っておりそれで厚みのあるドライブ感が出ているということです。
また、主旋律はポールが歌いながら二重録音で3度上のハーモニーも自分でつけているとか。ライブの時にはこの構成を変えてジョンの主旋律にするといった手法を使っているそうです。
なお、3連符リズムギターを弾きながらのハーモニーはさすがのジョンも難しいと言うことで、歌っていないようですが、バランスを崩さないアレンジにしているということです。
この曲ではポールがランニングベースを弾きだしたということでも特記すべきところということです。他の曲でも独特の歩き回るようなベースが特徴的なのですが、この頃から早くも弾いていたとか。

アハードデイズナイトでもギターソロの部分を12弦エレキギターで弾き始めたのですが、これで速い曲を弾くのは相当むずかしく、レコーディングの時には名手ジョージハリソンでも追いつかずに弾きこなせなかったので、やむを得ずテープの速度を半分にして1オクターブ低いところを弾いて間に合わせたとか。

名曲イエスタディは作曲したあとレコーディングするまで1年半かかったそうです。これはポールがあまりにも浮かんだメロディがあっさりと出てきた割にはすばらしいものだったために、どこかで聴いた曲だったのではないかと自ら疑ったためだそうで、いろいろと調べてようやくオリジナルだという自信が持ててからレコーディングをしたためだとか。

曲のすべての面で非常によく考えられ、当時の最新の技法を使っており、とても20歳になるかならないかのメンバーが作ったとは思えないということです。
この本を読みながら、ビートルズの曲を聴いてみると新たな発見をできるかもしれません。